「おすすめ観光地は?」 中国でSNS頼みの「アドバイス旅行」流行
【東方新報】中国の秋の旅行シーズン・国慶節連休(今年は9月29日~10月6日)で、今年は「听歓(アドバイス)式旅行」というスタイルが流行となった。「中国版インスタグラム(Instagram)」とも呼ばれるSNS「小紅書(Red)」を通じて、観光地のおすすめや「ハズレ」ポイントを見知らぬユーザーたちに教えてもらうのだ。小紅書は若い女性を中心に人気のSNSで、多くのユーザーが「映える」スポットの写真を投稿している。 「4日間、蘇州市(Suzhou)を旅行します。同伴者はあまり体力がありません。アドバイスをお願いします」。こうした投稿に対し、「○○に行くには意外に坂道が多いので、ツアーバスがいいですよ」「有名な□□はこの時期、それほど見どころはないので避けた方がいい」「ガイドブックにあるグルメ街より、△△通りは地元住民が行く安くておいしい店がいっぱいあります」と次々とアドバイスが送られる。 小紅書が発表した「2023年国慶節観光リポート」によると、アドバイスを求める1件の投稿に対して平均43.9件の助言が送られたという。観光地、景色、料理などでハズレがない「ホワイトリスト」を紹介するパターンと、逆に「行ってはいけない」という「地雷リスト」を作成する人もいる。「夕方にビーチへ出て、夕陽を眺めながらお酒を飲む。それを写真に撮ってSNSに投稿すると最高に映えます」といった微に入り細にうがつアドバイスもある。 小紅書のアドバイス式旅行は数年前から広まっている。アフターコロナ初の国慶節連休で久しぶりに長期旅行をした人たちが、このスタイルを取り入れた。それとともに最近は、アドバイスに頼りすぎる「小紅書病」という言葉も生まれている。 国慶節連休に河北省(Hebei)の秦皇島(Qinhuangdao)を旅行した陶菲(Tao Fei)さんは、「旅行を楽しんだというより、小紅書の指示通りの『出張』に行ったようなものでした」と自虐的に振り返る。 陶さんは、あるブロガーの「秦皇島で絶対行くべき所」というプランそのままに旅行。「ちょっと汚い屋台の烤冷面(冷麺の生地を切らずに鉄板で焼き、具を入れたお好み焼きのような軽食)を食べるべし」「このミルクティーショップに行かなければ秦皇島に来たことにならず」などの内容をそのまま実行した。ただ、気温30度の中、1時間行列に並んで飲んだミルクティーは「普通の味」だったという。 ユーザーの善意で成り立っているアドバイス式旅行だが、最近は特定の観光地や飲食店に誘導するため誤った情報や大げさな内容を流すユーザーもいるという。 中国メディアは「小紅書に頼らず、自分が行きたいところに行くという当たり前の旅行をすることが一番」と指摘している。ただ、陶さんは「それでも小紅書のアドバイスは他では分からないものも多い。これからもアドバイスに頼ってしまう気がします」と苦笑する。デジタルネイティブ世代にとっては、生の感動を味わう旅行でもSNSは切り離せないようだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。