「警報」の発表基準をはるかに超える「特別警報」とは?
気象庁が発表している「注意報」や「警報」はお馴染みですが、8月30日から新たに「特別警報」が加わります。この「特別警報」は、従来の「警報」の発表基準をはるかに超える、「数十年に一度の大雨や暴風など」が予想される場合に気象庁が発表するものです。この特別警報、どういう状況のときに発表され、私たちはどう行動すればよいのでしょうか?
特別警報、作った理由は?
この特別警報を新たに設けた理由について、気象庁予報部の五十嵐洋輔さんは、東日本大震災や2011年の台風第12号が大きなきっかけだったと振り返ります。「気象庁では当時警報は出していたものの、大災害への危機感がしっかりと伝わらなかったのではないか」と反省し、人の命を救うためにより緊迫感が伝わる手法を検討してきたということです。 警報は少しでも災害の恐れがあれば出しているので、警報は出たけれど結果として被害がなかった、というケースも多々あります。そのため、「普通の警報よりもっと大きいものが来ていますよ」という危機感を効果的に伝える目的があったそうです。
どういう状況で発表されるの?
それでは、「数十年に一度の大雨や暴風など」とは具体的にはどういう状況のときで、何をもとに、誰が判断しているのでしょうか? 大雨の「特別警報」を例にみてみましょう。気象庁では、気象レーダーとアメダスによる雨量の観測データを元にした、日本全国を5キロ四方のブロックごとに分割した解析データを持っています。 このデータをもとに、「それぞれのブロックごとに何ミリの雨が数十年に一回降るか」という指標を作っています。この指標を超えた場合に、「特別警報」が発表されることになります。ただし、実際に特別警報を出すときには、指標を超えたかどうかだけでなく、雨の範囲や今後の予測などをもとに、最後は予報官が総合的に判断して発表します。
大切なのは「早めの行動」
ただし、「数十年に一度」だからと言って「滅多に遭遇することはないな」と油断をしてはいけません。「数十年に一度」はブロックごとにみた場合なので、全国的には1年に数回発表される可能性があります。7月28日の山口県の大雨、24日未明から続いた島根県の大雨などが「特別警報」に相当する大雨でした。今年に入ってすでに特別警報に相当する大雨が降り、犠牲者が出ています。 では、私たちは自然災害から命を守るために、どう行動すべきなのでしょうか? 五十嵐さんは「命を守るために一番大事なのは、特別警報発表まで何もせず待つのではなく、警報など前段階での早めの行動を心がけることです」と話します。 つまり、注意報・警報段階で避難ルートを確かめたり、早めに避難したりすることが重要なのです。避難する前に、特別警報が出てしまった場合は、冠水などでかえって外出する方が危険な場合があります。避難するべきか家に残る方が安全か、住宅の位置や構造、道路の浸水の有無など周囲の状況に応じて冷静な判断が必要です。 30日から始まる特別警報。これをきっかけに、避難所場所や避難ルート、非常用品など普段の備えを見直してみてもいいかもしれません。