沖縄コザ高校自死事件「部活したくない」再調査で明らかになった“理不尽かつ強烈な叱責”
「前日の理不尽かつ強烈な叱責が大きな要因」
このように、男子生徒は顧問から壮絶なパワハラを受けていた。顧問は以前にも暴言騒ぎや、女子生徒にセクハラまがいの行為などの問題も起こしていたが、教員や部員らからは「言葉は荒いが愛情はある」「カッとなるところがある」「学校全体のことを考えて積極的に動く人」「空手の指導内容は基本的に適切な内容が多く、理不尽な内容で怒ることはなかった」との意見があった。 しかし、報告書では「自死前日の顧問からの理不尽かつ強烈な叱責が、男子生徒を自死に至らしめた直接のきっかけとなった大きな要因」と断罪。顧問が男子生徒に対し、支配的主従関係におかれていることを再認識させて覚醒状態を呼び起こし、さまざまな刺激に反応するようになったとも分析した。なお、沖縄県教育委員会は21同年7月末、この顧問を懲戒免職処分とした。ただ、校長は同年3月31日付けで定年退職。管理監督責任者は学校長だったため、教頭の懲戒処分はなかったという。 そのうえで、第三者委員会ではコザ高校や県教委へ以下のような事項を提言した。 ・自死予防教育・研修の実施 ・告発者等の不利益取り扱いの禁止 ・生徒の悩みごとに対する相談体制の構築 ・生徒・保護者が参加する部活動の運営体制の構築 21年2月に県が立ち上げ、「不十分だ」などと批判を受けた「第三者チーム」での調査から約3年。パワハラ行為に及んだ顧問はもういないが、一定の結論が出たと認識してもいいのかもしれない。なお、本稿記者はコザ高校に取材を申し込んだが、回答はいまだに届いていない。
部活の改革が進み、楽しく高みを目指せる部活に期待
「理不尽なことを受けて心身ともに疲れるまで、部活を続けるべきか」 「部活の指導を受ける際、暴言や暴力などがあり困っている」 4月から新学期を迎え、慣れない環境で不安を感じてはいないだろうか。部活では『厳しい指導をしてまで良い成績を求める』のか、それとも『ゆるく楽しくが良い』のか。考え方には多くの議論がある。 ただ、本稿記者はその中間の「厳しくかつ楽しく」を実現できないかと考えている。メリハリのある部活であれば、苦しいことも乗り越えられると思うからだ。 例えば『ゆるく楽しく』であれば、神奈川県立厚木北高校の「ヨガ同好会」で、インストラクターを外部から呼んで月1回活動。運動が苦手な生徒でも気軽に参加できることもあり、密かに注目を集めている。京都府舞鶴市立城南中学校でも、ボードゲームやキンボールなどを行う部活がある。体育会系の部活よりかは、生徒たちが楽しむことを主眼に置いていると感じられた。 今後、改革がもっと進み、楽しく高みを目指せる部活が増えることを願っている。
小林 英介