「うえの」と「したの」動物園を満喫 子供ならではの視点に「はっ」として大笑い 息子は3歳 還暦パパの異次元子育て
60歳。けれど父になってまだ3年。そんな記者が家族の日常をつづります。 ◇ 「タンポポさん、おはよう!」 保育園の行き帰りにいつも通る小径(こみち)。息子が突然、しゃがみこんで話しかけた。草むらから、ひときわ生命力のある黄色い花の群れが顔を出している。一斉に話しかけているように見えたのかもしれない。 言われるまで気づかなかった。低体重の早産で世に出て、3歳10カ月。ようやく平均身長に近くなり、1メートルまであと少し。その位置から地面を見下ろすようになったのか。 最近では、子供ならではの視点に「はっ」とすることが日常となった。 タンポポに挨拶した翌日の土曜日。きょうはどこに行きたい?と尋ねると、息子は「うえのどうぶつえん!」と即答した。親子で行ったことはないし、話題にしたことも、テレビで見たこともない上野動物園(東京都台東区)の固有名詞が、なぜ出てくるのか。 この子は天才なのか、と親ばかの頭でしばし考える。「保育園の年長のお友だちが、遠足で行ったらしいわよ」とママ。すぐに支度を整えた。 散ったばかりの桜の花びらが舞い、初夏のような陽気の中、キリン、サイ、カバ、ホッキョクグマ、ゾウ…と見て回る。小さいTシャツに汗がにじむ。「わー」「すごいね」「こうやって動いている」と感嘆の声をあげる中、一番人気のパンダ舎へたどりつく。 子パンダのシャオシャオとレイレイは、あまりの行列なのであきらめて、父パンダのリーリーのいる屋外の観覧場へ。息子の視線の先、大きな岩の上にいたリーリーはうつぶせになり、歓声にも微動だにしない。子パンダの飼育場から離れたところで、気持ちよさそうにグースカ寝ていた。 そんな姿にがっかりしたかと息子の顔をのぞき込むと、ニコニコ笑いながら、「パンダさん寝ていたね。パパみたい」。 初めてパンダに親近感がわいた。 記念にぬいぐるみを買ってやろうと、手をつないで売店に入る。上野のパンダ人気を象徴するように、抱えきれないくらい大きなもの、さまざまなポーズのものなど、多種多様なパンダのぬいぐるみがあった。どれを選ぶのか、手を引かれるまま棚に近づくと、息子は迷うことなく、「これ!」と、自分の目と同じ高さの棚にあったうつぶせのパンダを手に取った。 ちょうど3歳児が腕で抱えられる大きさ。大人の目の高さだと視界には届かない。売り場の人もよく考えるものだなと感心した。