“多難”な1年を勝利で終えた松浦悠士、覚悟の先行貫いた新山響平 総決算にふさわしい激闘/KEIRINグランプリ回顧
現役時代はKEIRINグランプリを3度制覇、トップ選手として名を馳せ、現在は評論家として活躍する競輪界のレジェンド・山田裕仁さんが立川競輪場で開催された「KEIRINグランプリ2023」を振り返ります。 2023年12月30日(土)立川11R KEIRINグランプリ2023(GP・最終日) 左から車番、選手名、期別、府県、年齢 ①古性優作(100期=大阪・32歳) ②佐藤慎太郎(78期=福島・47歳) ③松浦悠士(98期=広島・33歳) ④眞杉匠(113期=栃木・24歳) ⑤深谷知広(96期=静岡・33歳) ⑥山口拳矢(117期=岐阜・27歳) ⑦清水裕友(105期=山口・29歳) ⑧新山響平(107期=青森・30歳) ⑨脇本雄太(94期=福井・34歳) 【初手・並び】 ←⑧②(北日本)⑤(単騎)⑦③(中国)④(単騎)⑥(単騎)⑨①(近畿) 【結果】 1着 ③松浦悠士 2着 ⑤深谷知広 3着 ④眞杉匠
単騎3名のコマ切れ戦で予想は例年以上に難解に
さあ、ついにこの日がやってきました。今年は東京都の立川競輪場を舞台に開催された、KEIRINグランプリ2023(GP)。出場する選手が決まり、枠番や並びが発表されてからというもの、この難解なレースとどう戦うかを延々と考えていた……なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。今年はコマ切れ戦となったのもあって、例年以上に難しいグランプリだったと思います。 それに、掛け値なしの「一発勝負」ですから、選手のデキがどうなのかを見極めることもできない。インタビューでは松浦悠士選手(98期=広島・33歳)が「直前に扁桃炎で体調を崩したので、そこは割引」とコメントしていましたが、そこからどれだけ体調が持ち直しているのか、判断しようがありませんからね。公開練習での感触は上々だったようですが、それでもやはり悩ましい。これも、グランプリの難しさです。 デキについての話でいえば、脇本雄太選手(94期=福井・34歳)が調子をどれだけ上げているかというのも、予想するうえでの重要なポイントです。冷え込みが厳しくないのもあってか、今年はイメージよりも軽いバンクコンディションのよう。これは、“最強”のスピードを持つ脇本選手に有利に働きます。絶好調ならば、得意とする後方からの捲りで、昨年に続く連覇をあっさり決めても不思議ではありません。 しかし、そうは問屋が卸さない……と考えているはずなのが、新山響平選手(107期=青森・30歳)。前受けから突っ張るアグレッシブな走りを貫き通すことで、今年は随所で存在感を発揮してきました。「自分のスタイルを確立した」とレース前にコメントしていたとおり、この頂上決戦でも突っ張り先行で挑んできそう。しかし、脇本選手と前でもがき合う展開になると、その時点で自身の優勝は消えるといっても過言ではありません。 誰もが優勝だけを狙うグランプリ。それだけに、脇本選手が後方から動いたときに、新山選手がどう対応するのか? 突っ張るのか、引くのか、それともまさかの捲りがあるのか……新山選手の作戦次第で、展開が大きく変わります。アレコレ考え出したらキリがないですが、いちばんの注目は初手での位置取り。それがいかに現在の競輪で重要かは、このコラムでも繰り返し述べているとおりです。 勝負がどうなるかは、初手からの「位置取り」次第。古性優作選手(100期=大阪・32歳)が1番車とはいえ、近畿勢が前受けする可能性は低めでしょう。その場合、前受けするのは佐藤慎太郎選手(78期=福島・47歳)が2番車に入った北日本勢になりそう。そして、展開の利がもっとも見込めるのは「この直後」です。枠なりならば、中国ゴールデンコンビの前を任された清水裕友選手(105期=山口・29歳)となりそうですが…...。 単騎である眞杉匠選手(113期=栃木・24歳)と深谷知広選手(96期=静岡・33歳)、山口拳矢選手(117期=岐阜・27歳)の3名が初手でどの位置を取りにいくかも、展開を大きく左右するポイント。深谷選手や山口選手は、レーススタイル的に後方からの組み立てを選びそうですが、もっとも内の車番となった眞杉選手は、初手で中団を取りにいくケースが十分に考えられます。 近年の競輪界を牽引してきた近畿勢が、ここでも力をみせるのか。それとも、まだグランプリを獲ったことがない選手が優勝して、両手を高く突き上げるのか。堅く決まるのか、それとも波乱か。太陽が沈みかけた夕暮れの立川バンクで、今年はどんなドラマが観られるのか……さまざまな想いが交錯しながら、グランプリの発走を迎えました。それでは、レースの回顧に入っていきましょう。