<球児よ、大志を抱け>センバツ クラーク記念国際 初勝利に向けて/下 「2枚看板」支える捕手 /北海道
◇小学校時代から光るセンス 2021年10月、札幌円山球場で行われた秋季道高校野球大会決勝。クラーク記念国際の「背番号2」が一回表、1死二、三塁の好機で右打席に立った。4番・麻原草太だ。 相手投手の高めに浮いた変化球を思い切り振り抜くと、白球はバウンドしながら三遊間を抜けた。大舞台での先制打。大会初優勝とセンバツ初出場を大きく引き寄せた。 「結果を出してほしいところで、期待に応える選手だった」。小学校時代の指導者、松尾勝利さん(59)は当時からチャンスに強かったと振り返り、成長ぶりに目を細めた。 麻原は、札幌市立ひばりが丘小2年の時、少年軟式野球チーム「新札幌スターズ」で野球を始めた。当初は三塁手だったが、4年生で捕手に転向。6年生では投手も経験した。 監督を務めていた松尾さんは「どのポジションでもこなせたと思う」と語り、その野球センスとフットワークの良さに当時から光るものを感じていた。そして目を見張ったのは、熱心な姿勢だ。「野球を理解し、吸収する気持ちが強かった。他の選手に指導している時も自分が言われているように熱心に耳を傾け、質問も多かった」 昨秋の新チーム発足時、1年生ながら守りの要を任された麻原。いずれも一つ先輩だが、左腕エースの山中麟翔(りんと)、右の辻田旭輝(あさひ)と積極的にコミュニケーションをとり、センバツ初戦の戦略を練ってきた。 「僕がサインを出すところから試合が始まる」。守りを差配する捕手の重要性をこう認識する麻原はマウンドで掛ける言葉も相手によって変え、「2枚看板」を支える。「山中さんは気持ちが乗るような言葉。辻田さんには、はっきりと要求を伝えている」と言う。 センバツ初戦の相手は、昨秋の明治神宮大会で1―5で敗れた九州国際大付(福岡)だ。「1番から9番打者まで打撃がよく、厳しい球でも持っていく力があった。内角をうまく使えず、(配球が)外角中心の組み立てになってしまった」と敗因を分析。「ストライクゾーンを広く使い、打ち取りたい」とチームの甲子園初勝利に挑む。 佐々木啓司監督は「捕手に専念してほしい」と、センバツに向けた練習試合で打順を下位に据えた。だが、麻原は「(4番に)戻りたい。甲子園では自分のスイングで強い打球を打ち返したい」と闘志をにじませた。 小学生の頃から強い気持ちを持ち、ここ一番の場面で期待に応えてきた麻原に、松尾さんはこんな思いを寄せる。「甲子園でプレーする姿は後輩の子供たちにとって憧れであり、彼にとっても大きな財産になる。今回もやってくれると思う」【三沢邦彦】