「ガソスタの屋根」はなぜ“平ら”なのか? 雨や雪が溜まらない「画期的なシステム」とは?
ガソスタの「平らな屋根」に隠された工夫とは?
街中にあるガソリンスタンドのほとんどが、平らな屋根を持っています。 この屋根のことを「キャノピー」と呼び、燃料を給油する際に雨や日差しを遮ることで、作業の快適さや効率を保つ役割を果たしています。 しかし、平らな屋根が雨水を溜めてしまうのではないか、さらには雪の多い地域では積雪による問題が発生しないのか、疑問に思う方も多いでしょう。 なぜ平らな屋根が多く採用されているのでしょうか。 【画像】「えっ…!」これが「平らな屋根の骨組み」です!(30枚以上)
確かに斜めの屋根にすれば、雨水や雪が自然に流れ落ちるのではと思いますが、キャノピーの平らなデザインは、コストや施工の時間効率を最大化するための合理的な選択です。 多くのガソリンスタンドが同様の設計を採用することで、材料費の削減、工期の短縮が可能になります。 これは、アーチ型の屋根と比較して大幅にコストを抑えられるため、現在ではほとんどの店舗で平らなキャノピーが採用されています。 では、平らなキャノピーが雨水や雪の問題に対して無防備かと言えば、そうではありません。 実際に、キャノピーの表面は見た目以上に緻密に設計されており、わずかな傾斜がつけられています。 この傾斜によって、雨水はキャノピーの中央や外側に集まり、設置された排水システムを通じてスムーズに排水される仕組みになっています。 こうした仕組みのおかげで、雨水が溜まることなく、給油作業の安全性が保たれているのです。 さらに寒冷地での積雪対策についても、興味深い工夫がされています。 北海道などの降雪が多い地域では、キャノピーの屋根に積雪があまりにも多くなると雪下ろしが行われることがありますが、実際には太陽光で自然に雪が溶けるように設計されています。 多くの場合、キャノピーの屋根内部にはヒーターが設置されており、これにより雪が溶け、滴った水が再度凍ることも防げます。 このヒーターシステムによって、氷柱(つらら)ができることもなく、積雪が大量に落ちてクルマや人に危険を及ぼすこともありません。 こうした寒冷地ならではの工夫があるため、ガソリンスタンドは安全に利用されています。 法的な観点からも、ガソリンスタンドのキャノピーには特に規制が設けられていません。 消防法などでガソリンスタンドの構造には厳格な基準がありますが、屋根の形状に関しては特に制約がないのが現状です。 1970年代にはアーチ型の屋根が一部で流行しましたが、老朽化や合理性の観点から姿を消し、現在ではほぼすべてのスタンドで平らなキャノピーが主流となっています。 また、現代のガソリンスタンドはそのデザインや機能も進化しています。 以前は広い敷地面積が必要とされていたガソリンスタンドも、最近では店舗面積が縮小傾向にあり、よりコンパクトな設計が求められるようになっているうえ、ガソリンスタンドのデザインはますます画一化される傾向があります。 そのほかキャノピーの照明についても、省エネ技術が導入され、従来の水銀灯がLED照明に置き換えられる店舗が増えています。 これにより、夜間でもスタンド全体が明るく照らされ、エネルギー消費の削減にも貢献しています。 このように、ガソリンスタンドのキャノピーは、ただの屋根ではなく、さまざまな機能を兼ね備えた重要な設備です。 雨や雪といった自然の影響から給油作業を守りつつ、コストや効率を重視した設計が施されています。 そして、時代とともに進化を続けるガソリンスタンドは、これからもその形や機能を変えながら、私たちの生活に欠かせない存在として役割を果たしていくことでしょう。
くるまのニュース編集部