型破りのアイドルだった小泉今日子 女の子のあがきを描いた岡崎京子 二人のキョウコの自由への渇望
「結婚して妻や母となること」がスタンダードな生き方ではなくなったからこそ、どんなふうに年齢を重ねてゆけば良いのか不安や戸惑いを感じている人も多いのでは? それを解消するヒントとなるのが、社会学者の米澤泉さんの最新著書『小泉今日子と岡崎京子』。80-90年代に「アイドル」と「少女マンガ」というジャンルで一時代を築き、いまだ熱狂的に支持される「2人のキョウコ」が切り開いた道とは? 【画像】『GLOW』での連載をまとめた『小泉放談』(宝島社)。
押し付けられる「理想の彼女」像にノーを!
──今回、米澤さんが小泉今日子と岡崎京子という2人の女性をフューチャーした理由は何だったのでしょう? 私は長年「女性と社会」という観点からファッション誌の研究をしてきたのですが、その中でこの2人がファッション誌に深く関わっていたことに気付きました。たとえば小泉さんは、80年代から『anan』や『Olive』などのファッション誌によく登場していましたし、岡崎さんも『anan』や『CUTiE』などのファッション誌で作品を発表したり、若手女性文化人みたいな扱いで誌面にも登場していました。 当時の『anan』は流行最先端の雑誌で、いわゆるアイドルやマンガ家が誌面に登場することはまずなかった。そんな時代に2人は『anan』をはじめとするファッション誌を基盤に、それぞれの分野で新しい世界を開拓した。さらにはプライベートでもおしゃれが好きで、若い頃からステレオタイプな女性の生き方に抵抗感を抱えていた。そんな共通点をもつ2人を軸に、当時の社会と女性の生き方について紐解けば、きっと興味深いものになるはずだと確信しました。 ──米澤さんが小泉さんについて、男性にとって「理想の彼女」だった従来のアイドル像から逃走して、新時代のアイドル像を切り開いた──と書かれているのを読み、キョンキョンは男性主義的な価値観にノーを突きつけた人でもあったのか! と唸らされました。 最近はアイドルも多様化してきて、良くも悪くも特別な存在ではなくなりましたが、80年代のアイドルはある種、神格化された存在でしたよね。デビュー当時の松田聖子さんをイメージするとわかりやすいのですが、ファッション的にもヒラヒラしたドレスにふんわりした髪型とメイクで、新人賞をとって「お母さん!」って泣くような、健気で可愛い女性像を体現していた。 ──聖子ちゃんも、明菜ちゃんも、結局は「誰かにとっての理想の彼女」を引き受けていた感じはありますよね。 小泉さんもデビュー当初は「聖子ちゃん路線」を踏襲していましたが、なかなか売れず、それをやめて自分の判断でショートカットにしたら、それが新鮮だということで人気に火がついた。自分のことを「コイズミ」と呼び、当時最先端だったパンクなDCブランドを着こなしていた小泉さんは「誰かにとっての理想の彼女」ではなく「自分がこうなりたい自分」をジェンダーレスに追求した、今でいうセルフプロデュースの走りみたいな人だったと思います。