小学生の頃はできたのに…「1/2 +1/3 = 2/5」と答えてしまう大学生が忘れてしまった「通分」の考え方
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第21回
約分とは...?
『「3≦7」は正しい。では「3≦3」はどうか…?あなたは「整数」をきちんと理解していますか?』より続く 約分とは...? 6/15を2/5にする計算が約分である。 通分とは、分母が異なる分数同士の足し算、引き算などを行うために、それぞれを同じ分母の分数に直すことである。 例 2/5+1/3=(2×3)/(5×3)+(1×5)/(3×5)=6/15+5/15=11/15 2/15+1/10=(2×2)/(15×2)+(1×3)/(10×3)=(2×2+1×3)/30=7/30 最初の例から分かるように、自然数a、b、c、dに対して、一般に次の公式が成り立つ。なお、上記は足し算であるが、引き算でも同様である。 b/a+d/c=(b×c+d×a)/a×c ……(I) 参考までにこれは、 b/a+d/c=(b×c)/(a×c)+(d×a)/(a×c) が成り立つからである。 大人で知らなければ恥ずかしい... 2番目の例から分かるように、同じ分母の分数に直すためには必ずしも(I)のようにしないでも、二つの分母の公倍数(共通の倍数)に分母を揃える方法もあることに注意する。 大切なことは、通分という作業の意味をすっかり忘れて(I)だけを丸暗記して分数の足し算、引き算を計算することは危険、ということである。 余談であるが、2000年前後に、 1/2+1/3=2/5 と計算する大学生が注目された。実際、そのように分母同士と分子同士をそれぞれ足してしまう大学生はいる。 しかし、そのように計算する大学生でも、ほとんどは小学生の頃には正しく計算できたのである。だが、公式(I)の丸暗記だけで済ます学習法だった。そして(I)を思い出せなくなると、通分を理解していなかったために、上のような奇妙な計算をしても平然としていたのである。 また、通分は分数同士の大小比較にも用いられる。たとえば2/5と1/3を比較するとき、それらを通分した6/15と5/15を比較すればよい。もっとも、分数を小数に直して比較する方法もある。 『「5/7 ÷ 3/5 = 5/7 × 5/3」…なぜ分数の割り算は分子と分母を入れ替えた掛け算に直せるか説明できますか』へ続く