福島県浜通り、「食」切り口に映画化 ドキュメンタリー製作 震災前ホームムービー活用 来年上映へ
福島県いわき市ゆかりのノンフィクション作家川内有緒さん(52)は、浜通りに住む人々の生活を「食」を切り口にドキュメンタリー映画にする。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故が起きる前の地域の姿を継承するため、住民らのホームムービーも盛り込む予定で、映像を募っている。双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館の学芸員は、地域性が表れやすい食をテーマにした映像資料は、かつての浜通りの様子を伝えるのに役立つとしている。 浜通りの太平洋側を走る国道6号(通称・ロッコク)沿いを取材していることから、「ロッコク・キッチン」と銘打っている。映画監督三好大輔さん(52)と共に昨年11月から活動している。 川内さんが震災当時小学生だった帰還者に話を聞いた際、「10年間も故郷を見ずに過ごした。昔を思い出せない」との声を聞いた。一方、移住者は「外から移り住んだので昔の暮らしが想像つかない」とも。そこから、過去の映像の収集にも取り組み始めた。
映画は来年の全国上映に向け製作を進めている。動画投稿サイト「ユーチューブ」には企画の紹介映像を公開した。川内さんは「原発事故の影響は消せない事実。その中でも魅力的に楽しく生きている人の存在を伝えたい」と力を込める。 東日本大震災・原子力災害伝承館の学芸員瀬戸真之さん(48)は「自然、文化、生活など食から見えてくるものは多い。伝える人がいなくなってしまった郷土料理などの映像が見つかれば、失いかけた伝統をつなげられるかもしれない」と指摘している。 映像持ち込みイベントを14日午前11時から午後5時まで、浪江町の道の駅なみえで催す。対象は2011(平成23)年3月10日以前に富岡、大熊、双葉、浪江各町、南相馬市で撮影された食卓の様子、漁港の水揚げ、祭りなど食にまつわる風景。素材は8ミリフィルム、VHS、DVD、スマートフォンで撮った動画など。一部映像は来年1月25日、南相馬市の「おれたちの伝承館」で上映する。提供はメールや郵送でも受け付けている。問い合わせはロッコク・キッチン事務局の植田印刷所 メールrokkokukitchen@gmail.comへ。