ホットなにぎわい(7月7日)
災い転じて福となす。人間万事塞翁[さいおう]が馬とも言う。人知で計り得ぬ未来が待っているから、この世は味がある▼平田村のヒット商品は、女性3人の思い込みが原点だ。原発事故発生後、風評で農産物が売れなかった。鮮やかな赤色と丸い見た目のかわいらしさはきっと受ける、とトウガラシの一種「ハバネロ」を60本ほど育てた。生産者を応援しようと、道の駅ひらたは買い取ったものの、猛烈に辛い。これでは売れまい。駅長は途方に暮れた▼冷凍庫に残った約150キロの在庫をどうするか。頭をひねり、8年前に生まれたのがハバネロソフト。クリームの表面に粉末を振りかけ、初級、上級、地獄級の辛さを用意した。自己責任で食べるよう念書を付けて。話題を呼んで飛ぶように売れ、これまで1万3千人以上が挑んだ。地獄級の完食者はわずか3・7%だ▼道の駅は「日本一辛い村」を掲げる。人口減少、少子高齢化…。小さな村の悩みは尽きなくても、知恵が地域の盛り上げに一役買う。道の駅は14日に15周年感謝祭を催す。誕生秘話をかみしめて、真っ赤な甘味に挑戦してはいかが。当日が酷暑なら発汗で打ち負かす。梅雨冷えならホットなにぎわいが生まれる。<2024・7・7>