動物写真家・岩合光昭に聞く 「ねこ」が持つ魅力とは?
岩合さんの撮影スタイルは、完全に猫のペースだ。猫の機嫌が悪ければ、レンズを向けない。場合によっては、その日の撮影をあきらめることもある。“気まぐれ”な猫に付き合い、猫たちの立場になって、撮影を行う。「いい写真を撮るコツは、『決めつけて撮らないこと』、『かわいい写真を撮ろうとしないこと』。猫の気持ちを考えて、そっぽむいたら、その日はあきらめてもいいと思う。でも、そっぽむいた猫もかわいいよね」。 世界各国を渡り歩き、ときには大きな猫「ライオン」も撮影するが、日本にも“いい猫”はたくさんいる。広島県尾道市には「猫の細道」と呼ばれる場所がある。「あそこの猫はいい猫。尾道は坂道のある街なので、人もゆっくりしていて、猫もゆっくりしている。ゆっくりしている、いい猫たち。長崎もそうだね。坂のある街で、あそこの猫もいい猫だね」と、岩合さんは思いを巡らせ、頬を緩ませる。 猫と人間、どういう風に接していくべきか? という質問には、自然と向き合っている岩合さんらしい答えが返ってきた。「人間同士、接するときだって相手のことを考える。それでも難しかったりもする。猫も同じ。猫のことを考えて、接してほしい。人間より猫のほうが難しい。自然保護とかの問題も人の立場で考えていると思う。そうじゃなくて、自然の立場になって考えないといけない」。 人を幸せにする力を持つ猫たち。その猫たちの立場になり、猫が暮らす環境を考えて、私たち人間も生活していくことが、猫の魅力を守ることにつながるのかもしれない。 ■岩合光昭(いわごう・みつあき) 1950年東京生まれ。19歳のとき訪れたガラパゴス諸島の自然の驚異に圧倒され、動物写真家としての道を歩み始める。以来、地球上のあらゆる地域をフィールドに撮影を続けている。その美しく、想像力をかきたてる写真は「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙を2度にわたって飾り、全世界で高く評価されている。木村伊兵衛写真賞を受賞した「海からの手紙」(朝日新聞社)や全世界でベストセラーとなっている「おきて」(小学館)をはじめ、数多くの写真集を発表。 デジタル岩合 写真展「ねこ歩き」クレヴィス