「家畜はペットではない」。羊の解体見つめる遊牧民の男の子
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。
遊牧民の子供は、幼い時から大人の背中を見ながら育つ。彼らは家畜と一緒に遊びながら、家畜と人間の付き合いを理解する。 大人も彼らに積極的に仕事をやってもらう。できないことや怖いことがないように、全部やってみようという性格を徐々に身に着けていくためだ。3、4歳になったころからは、自分よりはるかに大きな馬に乗り、家畜の群れを追いかけたりする。 モンゴルでは必ず幼いころから、家畜をさばく作業を見て、手伝いをする。遊牧民にとって、家畜をさばき、それをご馳走することは生活に欠かせないことで、生活を維持する基盤だからだ。
子供は早くから、日常生活でこうした作業に慣れることで、家畜はペットではなく、彼らの生活に欠かせない大切な財産であり、食料であることを学び、家畜と人間の関わりを正しく理解していく。 しかし、最近は一人っ子ばかりになったので、子供を甘やかし、騎馬など危険なことをさせたくない親が多くなっている。そのため、家畜を怖がったり、「きたない」「くさい」と嫌がるようなことも増えた。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回」の一部を抜粋しました
---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。