【ラグビー】スピアーズのツインタワーが「カテゴリーA」へ? 「何でも起こりうる」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイが擁するツインタワーである。 右に立つデーヴィッド・ブルブリングは身長199センチ、体重113キロで35歳。2019年に加入している。 左にいるのはルアン・ボタ。身長205センチ、体重120キロで32歳だ。ブルブリングより1年早い’18年にこのクラブの門を叩いている。’19年には一時イングランドのロンドン・アイリッシュに在籍しながら、以後はずっとスピアーズのジャージィをまとう。 2人は揃って南アフリカ出身で、持ち場はFW第2列のLOだ。突進、チョークタックル、ラインアウト、モール、スクラムにおけるプッシュで光る。 旧トップリーグ時代からこの国のラグビーシーンに爪痕を残し、一昨季の国内リーグワンでは史上初の優勝に喜んだ。前年度は6位も、今年12月からの新シーズンで復権を狙う。 11月2日、浦安D-Rocksと練習試合をした。敵地の浦安Dパークで今季昇格の相手に17-40と敗れるも、先発したボタは「きょうは日本へ戻ってきた外国人選手が試合勘を戻す位置づけの試合でした」。着実な進歩を誓う。 「その目的は果たせたのでよかったと思います。他のチームと同じよう優勝を目指し、1戦、1戦、しっかりと戦う」 後半から登場のブルブリングも、こう展望する。 「いまはスコッドの層を厚くして、シーズンを通して戦っていけるための準備をしています」 国際統括団体のワールドラグビーは今年8月、代表資格にまつわるレギュレーションを一部変更した。 ルーツを持たない国で代表になるための要件として掲げられた「5年以上続けて当該国に住む」という条項がやや緩和され、「代表でプレーする時点より前に5年間継続して当該国の協会もしくはラグビー団体のみに登録する」となった。 リーグワンの規定もこれに準じる。日本代表資格を持つ選手にあたるカテゴリーAの定義が変わった。 リーグ登録をおこなったシーズン開始日から48か月(4年)以上継続して日本ラグビー協会に選手登録していれば、カテゴリーAで戦えるようになった。そもそも従来の継続居住の取り決めがあった時も、カテゴリーAになるための継続居住期間は代表資格要件のそれよりも12か月、短かった。 各チームは、11名以上のカテゴリーAのメンバーを同時に出場させなければならない。スコッド内にカテゴリーAの実力者が増えるほど、首脳陣は幅広い選手起用ができる。そのため、カテゴリーAの海外出身者は市場価値を高めている。 さらに今回は、これまで5年以上この地でプレーしながら一時帰国の期間が長いなどの理由でカテゴリーB(他国代表歴がなく、今後の日本代表の資格を取る可能性がある選手)とされていた選手が、揃ってカテゴリーAとなりそうだ。 ブルブリングやボタも然り。諸条件が整えば、カテゴリーBとして限られた出場枠を分け合っていた時代に終止符を打てる。 「カテゴリーAになるのが確定したら嬉しいし、そうなることを望んでいます。ルアンと同時に試合に出られるのはチームにとってプラスになるでしょうし、2人で一緒にやれるのは楽しいです」 ブルブリングがこう言えば、ボタも頷く。 「これまで2人とも家族を母国に置いてゆく時期があるなど、犠牲にしてきたものも大きかった。そんな中、シーズンの最初からカテゴリーAで戦えるのはよいことです。今後、国際試合に出られるのであればなお素晴らしい」 改めて言えば、カテゴリーAのプレーヤーは日本代表入りに挑める。かねてジャパンを志していたボタはほほ笑む。 「日本代表入りは私の夢のひとつ。チャンスが来たらノーとは言いません」 いまの日本代表を仕切るエディー・ジョーンズヘッドコーチが早朝練習をおこなっているのを受け、こう続ける。 「エディーさんと一緒に働いたことがないので、どんな印象かというコメントは控えます。ただ、ともに仕事ができるのなら楽しみ。もし代表に加わるのなら、たとえ朝が早くても頑張ります」 ブルブリングは、今回のことがあるまで日本代表を意識してこなかったという。 「そんな可能性はないと思っていたのですが、今度のルール改正によって、『何でも起こりうるな』という感覚です」 今季のスピアーズでは、昨年までニュージーランド代表を指導していたスコット・マクラウド新アシスタントコーチが防御を整備する。 移籍組には、元静岡ブルーレヴズでカテゴリーBのSHのブリン・ホールがいる。選手層に厚みを加える。南アフリカ代表HOのマルコム・マークスらカテゴリーCの3選手も健在。制空権を握るコンビがカテゴリーAに遇されることは、さらなる追い風となりうる。 ゼネラルマネージャーになりたての前川泰慶氏は「黄金時代を作りたい」と意気込んでいる。 (文:向 風見也)