安元洋貴がジェイソン・モモアとの歩みを語る「『ワイスピ』のダンテも印象深くて大変な役だったが、アクアマンは思い入れが強い」
海底アトランティスと人間の血を引くアクアマンの活躍を描くアクションエンタテインメント『アクアマン/失われた王国』(公開中)。ワイルドでユーモアあふれるアクアマンが大暴れする本作の日本語吹替版で、ジェイソン・モモア扮するアクアマンの吹替えを演じた安元洋貴が、映画の見どころやアクアマンの魅力、収録の様子を語った。 【写真を見る】アクアマンを演じるに当たってジェイソン・モモアは前作よりも鍛えた肉体を作った 世界各地で異常気象が巻き起こり、海底王国でもパンデミックが発生。その原因が太古に南極の氷河の奥深くに封印された失われた王国と関わると知ったアトランティスの王、アクアマンことアーサー(ジェイソン・モモア)は、監獄に収監された野心家の弟オーム(パトリック・ウィルソン)に協力を要請。2人は手を組み、邪悪な未知の軍団に戦いを挑む。 ■「王様であるアクアマンは、陽の力が自然に出ているところがいいです」 吹替えをし終えた感想を聞くと「ハチャメチャで、とにかくおもしろい映画」という答えが返ってきた。「ジェットコースタームービーというかすさまじい展開で、テンションも高いから爽快感もすごいんです。終わった時は達成感がありました」と振り返る。「作品もそうですが、アーサー(アクアマン)を演じるジェイソン・モモアさんはすごくテンションが高いので、吹替えの時物理的に声も張らないといけないんです。メチャクチャ大変でしたが、すごく楽しかったですね」と語る安元は、アーサーの明るさは自然ににじみ出たものだという。「明るい王様なんですが、明るくあろうとしているわけじゃなく、陽の力が自然に出ているところがいいですね。くじけそうになるシーンもありますが、それでも歯を食いしばって前向きに頑張るんです」。 前作『アクアマン』(18)は日本で興行収入16億円超え、観客動員数111万人を超す大ヒットを記録した。安元は高い人気の要因を「徹底した作り方」ではないかと分析する。「海底の映像を観せよう、観たことがないバトルを観せようと、一切妥協せずにとことん作り込んだのが成功につながったと思います。ジェイソン・モモアさんをはじめ、すべての役者たちが妥協せず、高いテンションで演じ切っていました。その熱量みたいなものが、皆さんに伝わったのでしょう」と推測し、その熱量は本作でも持続されている。 前作はアーサーことアクアマンがアトランティスの王となるまでの物語。今作でアーサーは王として民を守る立場になり、私生活では子どもが生まれてイクメンの日々を送っている。声を演じる上でキャラクターに変化はあったのだろうか。「立場が違えど、アーサーはアーサーで、人として変わった印象はなかったですね。優しさもあるし、やっぱり小難しいことは苦手という(笑)。そんな部分を仲間や家族が助けてくれるんです。守るものが増えたけど、これまでどおりのアーサーでした」と言い、役作りも前作のキャラクターを踏襲した。 ■「アクアマンの陸での強さもたっぷり楽しめます」 人類と海底人の血を引くアクアマン。本作は海底のバトルのほかにも、砂漠や巨大生物が生息するジャングルなど様々なシチュエーションで大冒険を繰り広げる。「アトランティスの王ですから海の中で無敵な存在なのはもちろんですが、陸での強さもたっぷり楽しめます。どれも見ごたえありますが、とにかく体当たりでいろんな物を倒したり、壊しまくったりします。脳筋と言ったらちょっと乱暴かもしれませんが、メチャクチャなところがあるので笑いながら演じました」と収録現場を振り返った。 お気に入りのセリフには、アクアマンの相棒的な役割を果たすスパイ仕様のタコのトポとのやり取りだという。「決めゼリフやかっこいいセリフはいっぱいあるので好きなセリフを見つけてほしいんですけど、僕としてはトポとの絡み。流しちゃうのがもったいないくらい笑えるやりとりが多いのでぜひ注目してほしいです。この映画を観たら、みんなトポ好きになると思います」。 ■「(アクアマンの)最後の決断の意味を感じ取ってもらえたらうれしいですね」 そんなパワフルな見せ場のほか、前作で敵対していたオームと手を組んだり、親と子の絆を描いたりとドラマ面でも熱い見せ場が盛り込まれた。「家族のシーンはぐっとくるものがあった」という安元にお気に入りのシーンを聞くと、予告編でも使われたアクアマンとオームを母アトランナ(ニコール・キッドマン)が抱擁するシーンを挙げた。「母にとってはどちらも大切なかわいい子ども。対立していた2人が組むのは大変なことだし、彼らが挑むのも厳しい戦いです。送り出す側としてはつらいんだけど、兄弟が並んだ姿を目にした母親はある種喜びの表情を浮かべるんです。彼女を通し、改めて家族や兄弟の絆を感じさせるところはすごく印象的でした」。 映画を通して最も好きなシーンに挙げたのは、戦い後のラストシーンだった。「やっぱりエンディングですね。アクアマンは最後に大きな決断をするんです。ある意味アトランティスが頑なに拒んできたことを彼が動かすという。そこにいたるまでの流れというのが、今作の裏テーマだと思います。詳しくは映画を観てほしいんですが、最後の決断の意味を感じ取ってもらえたらうれしいですね。そこでのアクアマンの笑顔、本当に明るく力強い笑顔もいいですね」。 ■「愛すべき者がいるから頑張るという思いがあふれ出ていると感じます」 ステッペンウルフの名曲「ワイルドでいこう!」で幕を開ける本作は、アクアマンを地でいくモモアの魅力を前面に出した痛快さも魅力。「ハーレーダビッドソンに乗るシーンがありますが、ほんとアメリカンバイクが似合う人ですね。『アクアマン』でありながら、ジェイソン・モモアさんのPVみたいなイメージもありました(笑)」。『アクアマン』のほかにも、『DUNE/デューン 砂の惑星』(20)など多くの作品でモモアの吹替えを演じてきた安元。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(23)では悪役だが、それでもモモアの魅力は変わらなかった。「ジェイソン・モモアさん自身がエキセントリックというか、すごく陽気な方なんでしょう。でもその陽気さのなかに、『ワイルド・スピード』には狂気があった。本作にはそれがなく、愛すべき者がいるから頑張るという想いがあふれ出ていると感じます」。 当たり役としてモモアを演じてきたなかで、特に印象が強いキャラクターを聞くとアクアマンという答え。「最初に僕が演じたのがアクアマンだったということもありますね。『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』のダンテも印象深くて大変なキャラクターでしたが、アクアマンは思い入れが強いんです。そんな役にまた会うことができて、とてもうれしいですね」という安元はタフガイやダンディな役で知られるが、モモアにシンパシーを抱く部分はあるのだろうか。「おこがましくてちょっと言いづらいですが…タフなイメージからか僕もそういう役が多いんですが、いつも彼のタフさは見習いたいと思っています」。 最後に『アクアマン/失われた王国』をどんな人に勧めたいか?と聞くと、「笑顔になりたい人」と即答だった。「爽快感の塊で、エンタテインメントの塊。すっきりできるし、観終わったあと、みんなが笑顔になれる映画だと思います。観る人を選ばない作品になっているので、たくさんの人に観ていただきたいですね」。 取材・文/神武団四郎