『銀魂』の魅力がぎゅっと凝縮 要素全部盛りの「バラガキ篇」は真選組ファン必見
まるで漫才のように騒々しく、まるで熱血ドラマのように胸が熱くなる『銀魂』の世界が、久しぶりに帰ってきたーー。『銀魂オンシアター2D バラガキ篇』は、そんな感情を存分に味わわせてくれる作品だ。およそ2年ぶりとなる劇場上映にて、お馴染みのキャラクターたちの活躍が繰り広げられている。 【写真】一番隊隊長・沖田総悟の場面写真 同作は、『銀魂』の人気エピソードである「バラガキ篇」のTV放送版を再編集した上で、おまけ映像を追加したイベント上映。2023年11月10日より、3週間限定で劇場公開されるスケジュールだ。 空知英秋による原作マンガ『銀魂』が完結したのが2019年。アニメでは2021年1月から上映された劇場版『銀魂 THE FINAL』で原作のラストが描かれ、シリーズが終了を迎えた。今回のイベント上映は、ファンにとっては久しぶりに『銀魂』の世界に触れられる貴重な機会だと言える。 内容は基本的にTV放送版から変わっておらず、追加のおまけ映像はあくまでおまけ。「真選組」の面々を演じる声優たちによる、声での掛け合いがメインだ。ただ、彼らのやりとりは本題を平気で脱線していき、劇場にいるファンたちを巻き込み、話を盛り上げてくれるものだった。上映時間がやってきた瞬間、早々に懐かしいノリにひたることができるだろう。 そして上映される物語についても、『銀魂』の魅力がぎゅっと凝縮されている。「バラガキ篇」は起承転結がコンパクトにまとまった内容でありながら、ギャグ要素とシリアス要素がちょうどよく融合されたストーリーだ。 このエピソードで実質的な主役を務めるのは、「真選組」の“鬼の副長”こと土方十四郎。物語は佐々木鉄之助という問題児が、突如「真選組」に加わったことから動き出す。鉄之助は名門・佐々木家の落ちこぼれであり、「真選組」と同じ警察組織である「見廻組」の局長・佐々木異三郎の異母弟だった。 エリートである異三郎は、鉄之助をあからさまに軽蔑するような態度をとるのだが、それを見た土方は激昂。鉄之助と似たような境遇だった昔の自分を重ね合わせる。そこから鉄之助との心の交流、「真選組」を狙った異三郎の陰謀、過激攘夷集団「知恵空党」(チェケラとう)の暴走、そしてなぜか巻き込まれる坂田銀時と、怒涛の展開が繰り広げられていく。 なお、タイトルの「バラガキ」とは方言で近づき触れれば棘が刺さるような暴れん坊のこと。土方十四郎のモデルとなった(?)新選組副長・土方歳三の幼少期のあだ名としても知られている。 あらためて『銀魂オンシアター2D バラガキ篇』の魅力について触れるなら、『銀魂』の代名詞とも言えるギャグパートは外せない。序盤だけ見ても、チャラついた鉄之助の「Bボーイ」的な言動、突如往来のど真ん中で始まる銀時とのラップ対決、まさかの「Cボーイ」への転身と、息を吐く間もなくカオスな展開が待ち受けている。 また局長の近藤勲、一番隊隊長の沖田総悟もボケが光る場面がしっかり用意されているので、「真選組」ファンにはたまらない。ちなみに今回のツッコミ役は大部分土方が務めているため、声優・中井和哉の美声がしきりに劇場内に響きわたっていた。 その一方で、シリアスな展開でも見どころ満載。とくに注目すべきは土方をめぐる描写で、幼少期の複雑な家庭環境や「バラガキ」になるまでの経緯などが明かされており、その熱い生き様の一端に触れられる。 もちろん銀時の見せ場も用意されているほか、バトルシーンでは「真選組」と「見廻組」の面子による活躍を堪能できる。さらに人気エピソード「さらば真選組篇」につながる描写が多数含まれているので、作品を振り返るいいきっかけにもなるだろう。 なお、『銀魂』は連載20周年の2023年から、アニメ『銀魂』が放送開始20周年を迎える2026年にかけて、「銀魂20周年イヤー」を開催中。2024年2月11日に、アニメ『銀魂』初の劇伴ライブ『銀魂SOUND ULTRA SOUL!'24』の開催が控えているほか、スピンオフ作品『3年Z組銀八先生』のアニメ化も発表済みだ。 一応完結は迎えたものの、まだまだ『銀魂』という祭りの熱気は過ぎ去りそうにない。今後の公式の動向にも注目していきたいところだ。
ハララ書房