甘い生活

【世界美女目録　アヌーク・エーメという女優】 アヌーク・エーメの初期の代表作といえば、まずこの「甘い生活」（1960年、フェデリコ・フェリーニ監督）を思い浮かべるだろう。日本でも大ヒットした。 エレガントだが、浮世離れした生き方の中に退廃的な香りをプンプン漂わせている。まさにフェリーニ・ワールド満開だ。アバンチュールを楽しみ、モラルのかけらもない刹那主義をいかんなくスクリーンに焼き付けている。 エーメは、ゴシップ記者のマルチェロ（マルチェロ・マストロヤンニ）とナイトクラブで出会う大富豪の娘、マッダレーナ役で出演している。 快楽と狂乱のパーティーの日々がすべてであるマルチェロは、ハリウッド女優シルヴィア（アニタ・エグバーグ）を取材すればローマのトレビの泉でらんちき騒ぎなのだ。 このトレビの泉で騒ぐ胸の大きなスウェーデン出身のエクバーグと並んで準主役級ではあるが、登場シーンはそれほど多くない。しかし、人生に疲れ切った物憂い陰を持つ女という役がかっこよすぎる。夜なのにサングラスをかけローマの街を遊び歩く。どうやらこの「夜サン」は彼女がハシリらしい。 正装したマストロヤンニを高級車に乗せて、行き着く先は不似合いで貧相な売春宿。このアンバランスがいかにも退廃的だと批評家をうならせた。そうだろう、正装した美男美女がピカピカの車に乗ってボロ家に横づけされれば誰だって驚く。 余談だが、原題の「ドルチェ・ヴィータ」は耽美主義のライフスタイルや嗜好を指す言葉だそうだ。それを邦題で「甘い生活」としたわけだが、この「ドルチェ・ヴィータ」は今でもディオールの香水やフェラーリの車などの名前で生きている。 マストロヤンニが有名人の追っかけをしているが、これは現代のいわゆる「パパラッチ」。実は今作の登場人物であるパパラッツィオが語源なのだ。スキャンダルで世界を騒がせた彼が、世界的に名をはせたのがパパラッチ役というのも皮肉なものだ。 エーメ自身もバツ2と相当スキャンダラスな女優だが、そこは絶世の美女の特権か、女優としても引く手あまただったというのだから映画界はマカ不思議。