<上海だより>甘く懐かし‥ご当地定番「上海ボルシチ」とロシア移民の物語
イギリスやフランス、アメリカが統治する当時の上海において、ロシア勢力は弱く、ロシアからの移民たちの生活は非常に苦難に満ちていたようです。そもそも、第一陣の難民たちの上陸から中国当局に拒否されており、交渉を重ねた結果なんとか約1200名の上陸を許されたのでした。それからもロシア移民は増え続け、1930年代には上海の租界全体で約2万人のロシア移民が住んでおり、白人系人種としては最も多い外国国籍の層となりました。 特にロシア人が多かった地域は、前述の名店・紅房子のあるフランス租界のメインストリート・淮海路近辺だったとされ、かつては多くのロシア料理のレストランもあったそうです。また、ロシア人たちの多くは歌手など音楽家も多く、政治よりも文化的に上海に接していたところが、上海現地の生活にも馴染みやすかったのかもしれません。
戦後に中国が共産主義へと転化し、上海の統治権も欧米列国から共産党へと移り、他国の外国人と同様にロシア人たちもこの地を離れることとなりました。そんな政治性を微塵も感じさせない甘い香りで、今も多くの上海人を虜にする赤い上海ボルシチは、これから先も懐かしい味としてずっと残り続けるのでしょう。