迫るティラノサウルス 恐竜のリアル求め、870体をつくった造形家
博物館に展示されている恐竜の復元模型や、フィギュアなどのもとになる「原型」などを半世紀にわたってつくってきた恐竜造形家の荒木一成さん(63)。緻密(ちみつ)なだけではない、こだわりがあるといいます。大阪府枚方市の工房を訪ねました。 【写真】福井県勝山市北谷町で見つかった「ティラノミムス・フクイエンシス」の復元模型。「恐竜の塔」完成後に新属新種と発表された=荒木一成さん作、福井県立恐竜博物館 ダチョウに似た大きな後ろ脚で地面を蹴り、今にも走り出しそうだ。学名「ティラノミムス・フクイエンシス」。福井県勝山市の県立恐竜博物館に展示されている復元模型は、長く伸びた尻尾、全身を覆う羽毛、鋭い爪がある前脚の羽……、一つひとつが緻密につくられている。 小型の獣脚類で、勝山市で発掘されていたが、昨年、県内で6種目、国内で11種目の新種の恐竜と分かった。骨盤の一部の腸骨が肉食恐竜ティラノサウルスの仲間と似ていることから、学名は「福井産の暴君(ティラノ)もどき」を意味する。 ■怪獣との違い 「恐竜は約6600万年も前に絶滅し、見つかったのが骨の化石で、生きていたときの姿に戻すのが『復元』です。皮膚や筋肉の下にある骨格を意識してつくってください」。恐竜博物館で10月に開かれた子ども工作教室「親子で恐竜模型をつくろう!」で語りかけた。 「怪獣との違いは、恐竜は実際に地球で生きていた、存在していたものということ。成長する間にけんかをしてケガをしたりしてきた。生きていた動物という感じでつくりたい」。若いころからのこだわりだ。 恐竜模型の第一人者。これまでにつくった模型は870体を超える。福井県立恐竜博物館をはじめ群馬県立自然史博物館(富岡市)、国立科学博物館(東京・上野)などの恐竜の復元模型を多数つくってきた。原型では、福井県で発見された新種の恐竜のロボット3体(JR福井駅西口)、フルタ製菓(大阪市)の「チョコエッグ」で2008年に付けられた恐竜のおまけなどを手がけた。
朝日新聞社