健康が意識が高い人は要注意!「塩分、糖分は控えめに」の落とし穴 悪者にされがちだが、不足するリスクも大きい
塩分や糖分の摂取は控えめに――。健康に気をつけている人ならば、最初に実践する食生活の「常識」のひとつでしょう。しかし、高齢者専門の精神科医として30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わってきた和田秀樹氏は「高齢者になれば、この『常識』がリスクになる」と言います。塩分や糖分の摂取制限だけでなく、健康長寿のために粗食に勤しむ高齢者も注意が必要なのだとか。果たしてその理由とは? ※本稿は和田氏の新著『「健康常識」という大嘘』より、一部抜粋・再構成のうえお届けします。
■塩分を控えめにした結果「低ナトリウム血症」に 血圧が高い人は、決まったように医者から「塩分控えめ」を忠告されて、真面目な人はそれを頑張って実行します。血圧を測定するたびに数値が下がって医者からほめられれば、それを励みにして、ますます塩分を摂取しなくなったりもします。 私の知人のお父さんも、医者のアドバイスを守って塩分の量には過敏なほど反応し、奥さんが時間をかけてつくった煮魚もタレを洗い落としてから食べていたといいます。
そのような暮らしを続けていた結果、血圧はずっと抑えられていたそうですが、ある時、気分が悪くなり、ひどい頭痛で入院してしまいました。検査をしたところ、頭痛の直接の原因かは定かでないものの「低ナトリウム血症」であることがわかりました。 低ナトリウム血症とは血液中のナトリウム、つまりは塩分の濃度が低くなった状態を言います。ナトリウムには体内の浸透圧を調節したり、神経や筋肉を正しく機能させたりする役割があって、体内のナトリウム濃度が下がると最初は軽い疲労感があり、重症化するとけいれんを起こしたり、昏睡状態に陥ることもあります。
近年増加の一途にある熱中症も、その多くは低ナトリウム血症によるもので、夏の暑い日に塩分を補給することなく水分ばかりを摂っているとひどいめまいに襲われたりするのはそのためです。 ■軽度の糖尿病でも長生きなアジア人 塩分と並んで悪者にされがちなのが糖質です。しかし、脳を働かせるためにブドウ糖は欠かせません。元気な子どもでも「朝ごはんを抜くと学校の成績が下がる」といわれるのですから、高齢者でブドウ糖が不足すればなおさら頭が働かなくなります。