身近で楽しむ低山歩き ガイドと金時山山頂へ
標高がそれほど高くない身近な低山は、四季を通じて山歩きを楽しめる。NPO法人静岡山岳自然ガイド協会が11月中旬、小山町と神奈川県南足柄市、箱根町の境に位置する金時山(標高1212メートル)で開催した一般向けガイドツアーに同行し、山頂を目指して山を歩く魅力を味わった。 金時山は箱根外輪山の最高峰で、山頂からの眺望が有名だ。富士山が麓から見える優れた眺めを目当てに登る人が多い。登り口は複数あり、山頂にトイレがあるなどツアーでも登りやすいという。今回は御殿場市深沢の乙女駐車場に午前8時に集合し、山頂を目指した。
まず準備
一般の参加者14人には、登山経験が少ない人や高齢者も。協会からの参加ガイドらは計5人で、福田正浩さん(45)が案内役を務めた。各自リュックサックにレインウエアや行動食を入れ、日暮れに備えてヘッドライトと予備電池も持参している。登山靴のひもを上までしっかり締め、トレッキングポールは平地で肘が直角になるくらいの長さに調節。思わぬけがを防ぐため準備体操も入念にした上で、山頂に向けてスタートした。
ゆっくり
出発後は上りが続く。「前に出した足の上に腰を持ってくる感じ。足を置く所を探しながら小刻みに歩いてみて」と福田さん。ゆっくりしたペースで進み、所々で福田さんが植生や地形について説明する。 約1時間で御殿場市と箱根町の境にある乙女峠。木々が開けた所から富士山の頂上付近が少しだけ見えた。さらに上って長尾山山頂を過ぎると、今度は箱根方面の展望ポイントに。遠くに芦ノ湖や仙石原が見えると、標高の高い場所にいる実感が湧いた。
にぎわう
金時山は岩場が多く、登山道上に張られた鎖を頼りに上る箇所もある。階段状になった所も足元に注意が必要だ。不意に人の気配が強まり、山頂に到着。神奈川県側からの別ルートで上ってきた人たちでにぎわっている。楽しみにしていた眺望は-。残念ながら霧が立ち込めて視界はほとんどなかった。こればかりは天候次第で仕方がない。 ちょうど昼時。他のグループの隙間に座って持ってきたおにぎりを食べる。山頂にうどんなどを出す茶屋が2軒あるのも、年間を通じて登山者が訪れる金時山ならではのことだ。 「無事に帰るまでが登山です」。福田さんが呼びかけ、来たルートをたどって下山する。上りよりも脚や膝への負担感が大きい。ポールをやや長めにして、少し先の地面を捉えながら慎重に進む。出発地点の駐車場に戻ると午後5時前。すぐに日が暮れた。 アプリで計測した歩行距離は約9キロ、標高差630メートルを歩いた参加者。達成感からか、疲れ切った様子はあまりうかがえない。山歩きにどんな魅力を感じているのか。焼津市の販売員平田伸子さん(62)は1年半前に地元の山に登り始め、今回は初めての山に挑戦した。「山歩きはウオーキングでは物足りないと始めた。今日はいつもよりも長い時間を歩くことができ、『やった感』があって心地良い」と満足した様子。天気を残念がりながら「今度はきれいな景色を見たい」と話した。 富士山、南アルプスといった高山を擁する静岡県だが、標高1000メートル前後の低山も数多く、幅広い年齢層の人たちが山歩きを楽しむ。一方、低い山でもけがや遭難などの危険はある。登山初心者や体力に自信がない人は単独での山行を避け、準備段階から山に詳しいガイドなどから助言を受けて臨みたい。 NPO法人静岡山岳自然ガイド協会には、日本山岳ガイド協会の認定資格を持つガイドが所属する。登りやすい山を選び、初心者を含む一般向けツアーを定期的に企画している。 ガイド付きの登山は、山の自然、植生、土地にまつわる歴史や伝説などの話も聞ける。国内外での登山経験が豊富な同協会の大嶽和彦さん(61)=富士市=は「企画を通じて、山岳自然ガイドの仕事とともに、安全のための登山技術を知ってもらいたい」と話す。