歌舞伎町レジェンド城咲仁×人気ライター佐々木チワワが特別対談「今も昔もホストたちはヤバすぎる!」
連載3周年を目前に夢のコラボが実現! ホスト業界の変遷から話題の頂き女子まで……。 歌舞伎町のレジェンドと人気ライターが徹底対談! 平成と令和で何が変わったのか? 歌舞伎町を知り尽くす二人が語りあった
城咲「6年間のホスト生活で、ピークの月の指名本数が350本くらいで、手取りは月に3000万円くらい。当時の年収は最高で3億円以上ありましたね」 すごすぎ……! 城咲仁 現役時代の豪華すぎるバースデーパーティー写真 チワワ「最近も億超えのホストはいますが、一人の超太客が払っている場合が多い。城咲さんみたいに多くの人を惹(ひ)きつけるカリスマはいないですね」 二人の対談はそんなゴーカイな逸話で始まった。かつて歌舞伎町の『クラブ愛』で5年連続No.1を記録したレジェンド・城咲仁(46)と、現代のホスト事情に精通するライター・佐々木チワワ。 平成と令和――二つの時代を知る二人が、ホストの移り変わりを語り尽くした。 城咲「一番売り上げたのは俺が引退する直前の’04年9月。引退前最後の誕生日があったこともあり、お客さんが多すぎて系列店にも入り切らず、期間を延長。その月は毎日が誕生日といった感じで、1億6000万円くらい売り上げました」 チワワ「スゴすぎません? 今は支払いの立て替えや売り掛けが簡単にできるので、なかには客に貸す形で、ホストが自腹で売り上げを入れることもある。1000万円売り上げているのに、全然カネがないホストとかもいます」 城咲「方法を問わないなら、俺の時代にもやばいヤツはたくさんいました。あるオラオラ系の先輩は、『今日は300万使うって言っただろ』って、女性をぶん殴ってATMに連れて行ってましたから」 チワワ「そんなこともあったんですね」 城咲「もちろん俺はそんなことしなかった。実際に、ある女性が『いい加減、私と一緒に帰りなさい!』って2000万円を机に叩きつけてきたことがあった。これはいい宣伝になるって思って……俺は、その机を蹴っ飛ばしたんです(笑)」 チワワ「え?」 城咲「これが俺の値段か! 馬鹿野郎って。億を超えるホストになるんだから、こんな安い金額出すんじゃねぇってね」 次々に出てくる武勇伝。そんなカリスマホストが感じる、時代の変化とは何か。 城咲「まず変わったのは服装だよね。昔はスーツ以外あり得なかった。俺は一着30万~35万円するグッチやルイ・ヴィトンをよく着ていました」 チワワ「今はストリート系のファッションが多いですね。スニーカーがOKのところも増えました」 城咲「俺らの頃は考えられないよ。今の子はプラダの厚底スニーカーをよく履(は)いているイメージがあるね」 チワワ「あとはバレンシアガ。私の偏見ですが、売れないホストほど、わかりやすいハイブランドのロゴが入った服装をしている感じがしますね(笑)」 城咲「確かにね。ほかにも気になることはあります。’19年に恩返しで『クラブ愛』で1ヵ月だけ働いたんです。でも椅子の座り方からグラスの持ち方まで、所作が全然なってない。教育が行き届いていないので、挙げ句の果てには結婚する前の俺の奥さんが来店した時に、関係を知ったうえで口説き出すヤツまでいて。接客のなかで、読解力もなければ文脈も読めないホストは悲しいよ」 チワワ「私の担当(のホスト)にも聞かせたい。いくら払えば一緒にホスクラ行って、私の担当を叱ってくれますか?(笑)」 城咲「俺は安くないよ(笑)。ただ、勘違いしないでほしいのは今の子たちを否定したいわけじゃないってこと。今の子も頑張っている。だからこそ、細かい部分で損するのは、もったいないなって思ってしまう」 時代とともに変化したのは、ホストだけではない。城咲が活躍した’00年代前半から20年が経ち、客層も様変わりした。 城咲「当時は銀座のママとか大企業の経営者とか、とにかくいろんな人が来ていました。もちろん女性客が多いですが、社交場って側面もありましたね」 チワワ「その頃にホス狂いになりたかった~~!!(笑)」 城咲「当時のホストは言うなれば飲み屋だった。でも今は、″推し活″の場になってしまっている。根本が違うんです」 チワワ「昔は自分の経済基盤ができて、稼いだカネでホスト遊びをするのがメインの客層だったと思います。でも、今は若い子たちの疑似恋愛の場になっている。時代なのか、自己肯定感が低い子が増えたのも大きい。『〇万円使ってほしい』って言われると、必要とされていると勘違いしてしまうんです。でも、基盤がないから結局、風俗とかで稼ぐしかない」 二人は、世間から大きな注目を集める「頂き女子」についても切り込む。 城咲「難しいけど貢(みつ)がせていたホスト側にも問題はある。色恋営業が多いんだよ。ただアフターする、枕するんじゃなく、接客で夢を見せなさいよ! ホストってそうやって活力を与える仕事。お客さんが飲んだ後に、お金を使ったことへ脱力感しか残らないんじゃ意味がないよ」 チワワ「女の子も『ホストが色恋で稼ぐなら私も色恋で騙(だま)して何が悪いの?』という発想なんですよね。もちろん間違っていると思いますが」 城咲「接客技術で勝負するからかっこいい。そういう気概や色気みたいなものがなくなっちゃったのは、少し寂しいね」 チワワ「客引きの方法とかも変わりました。今はマッチングアプリで女の子を探すんです。プロフィール欄にホストですって書いているヤツはまだいい。なかにはマッチして付き合ってから、『実はホストなんだけど、俺の頑張ってるところを見てほしい』って誘うホストもいる」 城咲「下手したら結婚詐欺だよ」 チワワ「それをマニュアル化している店舗もあります。そういう店は未経験者しか雇わないから、それを業界の常識だと思う新人も多い。悪質ですよね」 城咲「俺の頃なんて、とにかく足で稼ぐしかなかった。人見知りだったので、よく歌舞伎町の入り口にある自販機で『クアーズ』って安いビールを買って、一気飲みしてから街に繰り出していました」 チワワ「他にもSNSを使った宣伝が盛んです。ホストにプライベートを発信させるだけならまだしも、喧嘩とかトラブルが起きたかのようなヤラセの動画を撮影する店もあります。炎上系ユーチューバーみたいでダサいけど、担当の意外な素顔を見られるとかで人気もある」 城咲「俺は嫌だな。プライベートまで晒(さら)したら、理想のホストを演じられない」 チワワ「そうですね」 城咲「今のホスト業界が頑張っているのは間違いないし、それを否定するつもりもない。ただ、ホストはいつまでも夢を見せる仕事であってほしい。それだけは変わらないでほしいな」 現実を忘れ、夢を見られる場所――。時代は変わっても、その本質がなくならない限り、ホストは人々を魅了し続ける。 城咲仁:’77年、東京生まれ。タレントとして活動する一方、16年にわたりテレビショッピングでも活躍する。現在は子供の孤食問題を訴えるべく、東京都と提携したイベントの企画も行う 佐々木チワワ:’00年、東京生まれ。慶應義塾大学に在籍。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。著書『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)が発売中
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