諏訪湖畔で八重垣姫の恋物語 人形浄瑠璃文楽を公演 長野県諏訪市石彫公園
諏訪湖畔にある長野県諏訪市石彫公園で26日夕、人形浄瑠璃文楽の無料公演があった。人形遣いの吉田勘彌さん=兵庫県=ら文楽協会の技芸員13人が出演。御諏訪太鼓と共演して八重垣姫の恋物語「本朝廿四孝 奥庭狐火の段」を情緒豊かに演じた。伝統芸能のファンや家族連れら大勢が鑑賞に訪れ、夕闇の諏訪湖と八重垣姫像を背に繰り広げられる諏訪ゆかりの演目を楽しんだ。 「奥庭狐火の段」は、戦国武将・武田信玄の息子、勝頼に恋した上杉謙信の娘・八重垣姫(架空の人物)の恋の物語。聖地の諏訪湖で無料公演をしたいと、一般社団法人大昔調査会がクラウドファンディング(CF)を行い、目標額に達して実現した。同日行われた諏訪圏青年会議所主催の「諏訪圏フォーラム」の大トリを飾った。 三味線と義太夫節で情景や物語を表現。吉田さんら3人の人形遣いがあうんの呼吸で人形を操った。ハイライトは八重垣姫が諏訪法性の兜を手にして、諏訪大明神が遣わした狐に導かれて凍った諏訪湖を渡る場面。観客は命が吹き込まれた人形の表情と動きを息をのんで見入っていた。 文楽の三業に御諏訪太鼓伝承者の山本麻琴さんによる太鼓の演奏が加わった。御神渡り(御渡り)をつかさどる八剱神社の宮坂清宮司が船上で篠笛を吹き、演目の最後に湖内の八重垣姫像をライトアップする演出も。物語の聖地での特別な公演の雰囲気を引き立てた。CFでは571万円が集まり、映像化のための第2目標も達成。「奥庭狐火の段」を軸に諏訪の自然と歴史文化を発信する短編映画が制作される。