ユーザーの声から生まれた新型スペーシアの開発秘話とは?企画担当者にインタビュー!
新型スペーシアの注目ポイントは3つ「収納・質感・後席」
遠藤 先代スペーシアも新型と同様、2017年12月に発売される直前の2017年9月に、ホンダさんの二代目N-BOXが発売されました。その後2019年7月に四代目ダイハツ・タントが発売されています。そうした状況を踏まえ、先代スペーシアの販売動向やユーザーの声はいかがだったのでしょうか? 【写真を見る】新型スペーシアの開発秘話インタビュー。※本文中に画像が表示されない場合はこちらをクリック 小杉さん 初代は競合車と差を付けられていた中で、二代目は見た目にもしっかり大きくなったので、非常に好評で販売台数も伸びました。しかしN-BOXには敵いませんでしたね。 デザイン面では、スーツケースのようにアイコンとなるものを強く打ち出したので、スペーシア独自の世界観をしっかり訴求できたと思います。 私は二代目の商品企画には携わっていないので、今回の新型からになりますが、最初にN-BOXやタントやルークスに乗って調査したのですが、「他社さんがしているからウチも」ではなく、最終的にはお客さんを見て、お客さんと行動を共にして得た気づきをシンプルに盛り込んでいったのが、今思えば良かったですね。 遠藤 今回その中で新機軸として強く打ち出したいポイントは? 小杉さん 三つありますが、一つはインパネのレイアウトをもう少し使いやすくしたいというのがあります。軽ハイトワゴンのお客さんのクルマに乗って調査したところ、広いがゆえに片付かない、上手く収納できない面があったので、クルマの方が自然にアテンドしてくれるような、使いやすいインパネのレイアウトを目指しました。 先代はインパネの助手席側がボックスになっていますが、新型はそこを大容量のテーブルにしたいという構想が企画当初からありました。それを盛り込むためにデザイナーや設計担当と議論しましたが、コロナ禍を経てクルマの使われ方も変わってきました。 例えば、コンビニエンスストアでレジ袋が有料化されたため、袋をもらわずにお弁当を購入しクルマに戻る人が非常に多くなりました。ですが、車内のどこに置くかといえば、その場所がありません。 そういうこともきっかけでしたが、インパネのレイアウトはデザインと使いやすさの両立に特にこだわりましたので、使っていただく中で実感できると思います。 二つ目は質感ですが、お客さんの声を聴くと、N-BOXの方が質感が高いと。「その質感はどこを指しているんだろう?」と考え、今回はドアトリム上部に加飾を入れ、「カスタム」では思わず触れたくなるような質感を表現しています。 三つ目は後席ですね。先代でもスリムサーキュレーターを設定するなど、後席の快適性を強く訴求していましたが、お客さんを見ていると、広さを持て余しているようでした。 広くてスライドドアで便利だからと買っていただくものの、後席は物を置いて終わりということが多かったので、後席を快適性だけではなく利便性も高め、かつ後席に座りたくなるような仕掛けが欲しいと考え、「マルチユースフラップ」を採用しました。 「マルチユースフラップ」にはオットマンモードがありますが、それだけではスズキらしくなく、一つで何役も使いこなせるのがスズキらしくスペーシアらしいと思い、座面長を拡大する「レッグサポートモード」に加え、お客さんからもネガティブな意見としてあがっていた、荷物が落ちやすいのを改善するため、「荷物ストッパーモード」を加えました。 「マルチユースフラップ」は左右席に装着されますので、片側にチャイルドシートを装着してももう片方が使えますし、右側はオットマン、左側は物置といった使い方もできます。 いろんなお客さんがいらっしゃいますので、それぞれが一番使いやすいよう選択の余地を残すことに、すごくこだわりましたね。 開発当初は他社さんの超ロングスライドやBピラーレスボディについてユーザーさんに聴きましたが、意外と使われていませんでした。スペーシアは日常的に使えるシートアレンジを盛り込みたいということで、「マルチユースフラップ」を採用しています。標準車の「ハイブリッドG」と「カスタム」の「ハイブリッドGS」はオプションですが、それ以外のグレードには標準装備です。 他にも、シートバックテーブルの形状を見直したり、USB電源ソケットをタイプAとC、一つずつ設置するなど、後席の快適性ではNo.1を取る気持ちで開発しました。 遠藤 そう言われてみると、先代には分かりやすい飛び道具的装備がありませんでしたね。 小杉さん そうなんですよ。ですので必ず盛り込もうということになりましたが、使い勝手の良いものにするのが非常に難しかったですね。 遠藤 一つで三役を兼ねるとなると、コストが大きく跳ね上がりそうですが……。 小杉さん オットマンは電動というイメージを持たれる方が多いと思いますが、今回は敢えて手動にしています。その理由は、軽ハイトワゴンに乗るお客さんはとにかく忙しい、特に子育てママさんにインタビューした際は本当に分刻みなスケジュールでした。 そこで、最近の便利な家電を使うかと聞いたら、「それは使いません。自分でやった方が早いから」と。それがママさん視点だと思い、オットマンも手動にすることで、サッと好きなモードに変えられる方が嬉しいのだろうと考えました。コストの面もありますが。