【大学受験の仕組み】増え続ける薬学部、「薬剤師」が余る…はホント? 病院勤務・地方は…
大学の6年制課程の薬学部は薬剤師国家試験の受験資格が得られるため、根強い人気があります。しかし、昨今は「将来、薬剤師が過剰になる」「薬学部の新設や定員増は抑制される」といったニュースが報道されています。では、薬学部の教育現場では将来をどう見据え、どのような教育がされているのでしょうか。 【写真】絶対に行きたい慶応大学、AO入試は不合格だったが…一般選抜で生きた「瞬発力」
薬学部は薬剤師養成課程が従来の4年制から6年制に移行した2006年から、新設が相次ぎました。06年度には66大学67学部でしたが、23年度には77大学79学部に増えています。 この5年間を見ても、18年に山陽小野田市立山口東京理科大学、20年に岐阜医療科学大学と国際医療福祉大学、21年に和歌山県立医科大学、湘南医療大学、大阪医科薬科大学、22年に兵庫医科大学が薬学部を新設。24年は順天堂大学が薬学部薬学科、国際医療福祉大学が成田キャンパスに成田薬学部薬学科の新設を予定しています。 厚生労働省の推計によると、20年に約32万人だった薬剤師の数は45年には約43万人になり、必要な人数(33万~40万人)を最大10万人程度上回ると見られています。大学を管轄する文部科学省は薬剤師の需給バランスを鑑み、25年度以降の6年制薬学部の新設や定員増加を原則認めない方針を決めています。
地方では薬剤師が不足
では、薬剤師が余って仕事に就けないような時代は来るのでしょうか。90年以上の歴史がある岐阜薬科大学の原英彰学長はこう説明します。 「かつて薬剤師の求人数は、求職者数を大幅に上回っていましたが、現在は東京や大阪などの都市圏ではすでに薬剤師は充足している状態です。一方で青森県や福井県、沖縄県など地方ではまだまだ足りていません。地域格差が顕著になってきたということでしょう」 文科省も、「薬剤師不足の都道府県は薬学部の新設・定員増を例外的に認める」としています。原学長はこう続けます。 「都市圏で薬剤師は足りていると言っても、それは薬局薬剤師に限ったことで、病院の薬剤師は全国的に不足しています。薬局はさまざまな労働形態を選ぶことができるので働きやすいのですが、病院の薬剤部は入院患者の対応や、医師・看護師を含む多職種の方々との連携が必要であり、業務の幅も広いため、病院勤務を希望する薬剤師は必ずしも多くないのが現状です。新しい医薬品がどんどん出てくるので、薬局以上に勉強も必要です。全体で見れば薬剤師の将来の需給バランスは供給が増加していきますが、病院勤務の薬剤師の現状を考えると、十把一絡(じっぱひとから)げに『薬剤師が過剰になる』とは言いきれない状況です」