【漫画家に聞く】知られざる干潟の生態系とは? 夏休みに向けて読んでおきたい学習ファンタジー漫画『干潟備忘録』
「川/干潟」という環境にどんな生物が暮らしているのか。身近だけれど実は知らない生態系にワクワクする漫画が、5月中旬にXに投稿された『干潟備忘録』だ。想像力を刺激するファンタジーを交えて、楽しく学ばせてくれる。 知られざる干潟の生態系にワクワクする漫画『干潟備忘録』 本作を手掛けたのは、小さい時から魚や昆虫に興味があってよくフィールドでスケッチをしており、その延長線上として漫画を描くようになったというさとかつさん(@satokatu031)。Xで3.6万いいねを集めている本作の誕生秘話を聞いた。(望月悠木) ■ラストページの“骸骨っぽい何か”の意味 ――今回『干潟備忘録』を描いた理由を教えてください。 さとつか:Xで『干潟合同誌』という干潟に関する創作物を集めた合同誌を企画している方の投稿を見かけ、それに寄稿するために制作を始めました。この企画がなければ本作は恐らく描かなかったので感謝しています。また、この方は『ミズウオ合同誌』という合同企画も実施しており、私も短編を寄稿しているのでチェックしてもらえると嬉しいです。 ――“学生と未確認生命体に寄生されながら生物の観察をする”という作品でしたが、なぜこの切り口にしたのですか? さとつか:“未知の生物に寄生される”という状況はありがちですが、「それが川という身近な場所で起きたら面白いな」と思って採用しました。また、“主人公が血を与える代わりに寄生生物から情報をもらう”という設定は、自分が生物を研究する中で「生き物が教えてくれたら楽なのに」とよく考えていたことが背景にあります。 ――主人公とシラヌイはどのように作り上げましたか? さとつか:主人公のキリコは自分の同人誌の中でよく登場するキャラクターです。研究者という設定は共通していますが、それ以外は作品によってバラバラです。シラヌイはチワラスボに寄生する“オシリカジリムシ”という寄生虫をモデルにしています。学名がコレフトリア·シラヌイなのでこれをもじりました。 ――チワラスボやカイアシ類など、実在する生物を描く際に意識したことは? さとつか:主人公たちがデフォルメされているので、主人公たちが際立つようにできるだけ生物たちはリアルに描いています。また、背景がゴチャついているコマでは生き物のディテールを抑えました。 ――ちなみにキリコが運転する車は可愛らしいデザインでしたね。 さとつか:ジムニーを参考に描いた気がします。描いているうちに寸詰まりで可愛い感じになりました。 ――キリコとシラヌイののほほんとしたやり取りが素敵でした。2人の会話はどのように描きましたか? さとつか:どうしてもセリフ量が多くなってしまいやすいため、必要な部分以外はかなり多めに削るようにしています。絵については独学ですが、セリフ量やテンポは出版社の担当さんに教わった部分も多いです。自分自身読みやすくない漫画はなかなか読む気が起きないため、意識して調整しています。 ――ラストページでは、ヤブの根本が骸骨みたいに見えました。 さとつか:これはカニの巣穴のつもりで描きましたが、SNSでも「骸骨に見える」という声が多かったことに驚きました。確かに言われてみればそう見えます。自分も干潟にあるアシの根本にカニの巣穴がたくさん空いているのを見て、少し不気味に感じたことがありますが、無意識に骸骨などを投影していたのかもしれません。 ――これからの漫画制作における目標など教えてください。 さとつか:あまり具体的には考えていませんが、『コミティア』には継続して参加する予定です。11月のコミティアでは描き下ろしを含めた短編集を作りたいです。商業誌でも少しずつ何か作っていきたいと考えているので気長にお待ちいただければと思います。
望月悠木