本のデザインのお仕事って超多忙!? 『休むヒント。』の装丁を手掛けた人気デザイナーに「休むヒント」を聞いてみた!
---------- 「休日、何もしていないのに気づけば夕方になっている」「全然休めた気がしないまま、月曜の朝を迎えてしまう」そんなワークライフ“アン”バランスなあなたに贈る、豪華執筆陣による「休み方」の処方箋的エッセイ・アンソロジー『休むヒント。』が大好評発売中! そんな本書の装丁を手掛けたデザイナーの岡本歌織さんに、ズバリ「休むヒント」を聞いてみました! 超多忙な人気ブックデザイナーの休日の過ごし方とは――!? ----------
ブックデザイナーの週末
ブックデザイナーはまず依頼された本の原稿を読むことから仕事を始める。 平日はデザイン作業と打ち合わせで一日が終わるため、私はほぼすべて週末に原稿を読んでいるので、ますます休む時間がなくなってしまう。 「仕事でたくさん本を読んでいるから読むスピードも早いのでは?」と思われるかもしれないが、読んでいる途中で中断して調べ物をしたり(この舞台はどういう場所なんだろうと検索したり知らない言葉を調べたり)、登場人物やカバーイメージのヒントになりそうなことをチェックしたり、調べている途中で脱線してショッピングサイトで生活用品をポチッとしたり、アプリの無料漫画を休憩がてら読んで、その後チラッとSNSを眺めて、「しまった」とまた原稿に立ち戻りを繰り返しながら読んでいるとさらに時間がかかり、あっという間に陽が暮れて時には明るくなっている。 ワークライフバランスなんてあったものではなく、どうやったらメリハリをつけて休めるのだろうと常々考えてきた。 このたび『休むヒント。』という本の装丁のご依頼をいただき、「まさに自分も知りたいことだ!」と嬉しくなりながら原稿を読んでみたら自分と同じような悩みを抱えた休むのが下手なかたばかりで、「自分だけじゃなかった…」という安心感と(安心していてはいけないが)、激しく同意することばかりだった。 ここ数年で私が実行している休みかたは、強制的に休みをこじあけること。 旅行、映画、舞台、展覧会などのチケットを早めに買っておき、その日に向けて仕事先や職場に周知して「私はその日は仕事できませんよ」という空気を作り、このお金を無駄にしないためにも絶対行くという気持ちを持ち続ける。 どうやっても仕事が終わらず、とても楽しみにしていたのに泣く泣くチケットを無駄にしたときは「一体何のためにここまで仕事をしているんだろう」と、とても虚しくなるので効果抜群だと思う。 忙しさで疲労がマックスになると、どこか遠くに行きたくなる。 東京から離れて、パソコンもない、海や山や温泉がある場所がいい。 行きの新幹線や飛行機で景色を眺めて昼からビールを飲んでいる時が一番幸せかもしれない。 でも時間とお金をかけて物理的に遠くに行かずとも、身近にそこそこのお金で、日々の疲れも吹き飛ぶような楽しいことに最近気がついた。 コロナ禍で家にこもることが増えたこの数年間、動画配信サイトで様々な映画やドラマ、アニメを見る機会が増えたことがきっかけで好きなコンテンツも増えて、ファンミーティングに参加したり、番組のイベントに何度か足を運んだ。 推している韓国の俳優さんが日本でファンミをしたときも、生で見る彼は異次元のカッコよさでこんなに叫んだことはないという大声で一緒に歌い笑い盛り上がった。 また、好きな声優さんのYouTubeチャンネルイベントや、毎週聞いているラジオのイベントなど、いつも画面越しにみている人、声だけ聞いていた人と同じ空間で同志と一緒に盛り上がる楽しさで頭がクラクラした。 時間や距離に関係なく、こんなにもリフレッシュできるなんて。 感動と幸せで胸がいっぱいになり、まさに疲れが吹き飛んだ。 好きを増やすことは自然と休みにもつながるのかもしれない。 こういう幸せな休みを胸に抱きながらフワフワと家に帰り、「さてやるか」とまた机に向かって仕事をする。 ---------- 岡本歌織(おかもと・かおり) 東京都生まれ。広告制作会社勤務を経て、株式会社bookwallでブックデザインを学び、2015年からnext door designに所属。文芸書を中心に、児童書、雑誌、コミックなど様々なデザインを担当。 next door design:http://n-d-d.jp ----------
岡本 歌織(デザイナー)