【漫画】売れては返品を繰り返す“不思議な雀柄の着物”…明かされた真実に「粋なお話」「かわいい」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、日本の昔話を思わせるような不思議な漫画を多く創作するかんさびさんの『雀の着物の話』をピックアップ。 【漫画】着物に描かれた“雀”が夜中に飛び出して持ち主を怖がらせる…着物と骨董屋のやりとりに「可愛らしいお話」の声 2023年12月12日にX(旧Twitter)で本作を投稿したところ、8,000件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、かんさびさんにインタビューを行い、創作のきっかけやインスピレーションの源でもある日本の伝承・怪談の魅力などについて語ってもらった。 ■売られては返品を繰り返す“雀が描かれた不思議な着物” 舞台となる骨董屋には、雀が描かれたとても可愛らしい着物が売られていた。客の目に留まる機会も多い魅力的な着物だったが、なぜか売れてもすぐに返品されて…を繰り返しているなんとも不思議な品物だった。 あまりにも返品が続くため、ある時、客にその理由を聞いてみたところ“夜になるとスズメと着物が騒ぐのだ”と言う。骨董屋の店主は真実を確かめるべく、自室に雀の着物をかけて様子を見ることにした。 その夜、騒音で目を覚ますと部屋中を飛び回る複数のスズメがいた。さらに、着物が動き出してスズメを追いかけている。店主が声をかけると着物は振り返り、状況を話し始めた。 “稲の描かれた帯がなくなってしまったため、お腹を空かせたスズメが餌を求めて飛び回ってしまうのだ。自分のことを気に入った神様が私に魂を与えてくれたのだが、このままでは神様の元へ帰れない。”と困った様子を見せている。 そこで店主は、黄金色の組み紐を“稲穂結び”で結い、着物に巻いてあげた。組み紐によって着物に稲穂が戻ったため、たちまちスズメたちも着物に戻り、着物は安心した様子で神様の元へと帰っていったのだった。 本作の投稿へは、「粋なお話…」「素敵なお話ですッ!」といった、不思議な物語に引き込まれた読者からの反響コメントが寄せられた。 ■作者・かんさびさん「日本の伝承や怪談に触れると、郷愁のようなものを感じる」 ――『雀の着物の話』を描こうと思ったきっかけや理由などをお教えください。 私は日本の昔話や民話のようなお話を描きたいと常に考えていまして、今回は着物で何かお話を作れないかと考えていました。そこで着物にまつわる不思議な話を調べていたとき「小袖の手」という妖怪を知り、しかしそれは悲しい怨念などが着物に宿るお話が多かったので、もっと違う形で着物に魂を宿せないかと考えました。そして着物の柄などを調べていましたら、可愛らしい動物の柄が目につき、動物に関係したものにしようと思って雀にたどり着きました。今の冬の寒い季節の雀はふっくらしていて縁起物だということにも惹かれたんです。 ――最後、着物の妖は手に稲穂を持って去っていきます。これは“稲穂結び”の組み紐とは別に、店主が持たせてあげたのでしょうか?それとも、組み紐をつけたことで稲穂を手に入れたという意味なのでしょうか? これは読者の方に推察していただこうと思って添えたもので、もしかすると店主が持たせてあげたものかもしれませんし、着物の妖怪が稲穂の組み紐の力で手に入れたのかもしれません。 ――妖は怖い印象のある存在も多いです。ですが、今回登場する着物の妖のように、人に危害を加えない存在もいます。かんさびさんはこれまで、漫画を創作しながら色々な妖や妖怪を知ってきているかと思いますが、会ってみたい妖・妖怪はいますか? やはり骨董屋のお話を描くきっかけとなった、付喪神でしょうか。長い年月を経てものに精霊が宿り、付喪神になると言われておりますが、妖怪なのか付喪神という別の精霊のようなものなのか、曖昧なところではあります。しかし、百器徒然袋にも古くなったものの妖怪などが紹介されているので、もし妖怪に会えるのなら、私の家の古い道具の付喪神に会って、これまでの歴史などを聞いてみたいものです。 ――かんさびさんのXには、日本以外にも海外の伝承や文化などに関する投稿もありました。今後、日本だけでなく海外の不思議な話を創作される予定はあるのでしょうか? 私は現在ポーランドに住んでいまして、ヨーロッパの文化に触れることが多いです。そこで知った民俗学の知識や面白い伝統などからインスピレーションを得たいとは思ってきたのですが、長く住んでいても、やはり日本の伝承などから創作のインスピレーションを得ることが多いです。海外に住んでいるからこそ逆に日本が魅力的に見えて、創作の力になっているのかもしれません。すでにいくつかヨーロッパの骨董品にまつわるお話を作ってはいますが、やはりこれからも日本を軸にしたお話がメインになると思います。 ――最後に、かんさびさんが感じる日本での伝承や怪談などの魅力をお教えください。 私は日本の古民家と呼ばれる古い家に生まれ、四季折々の行事なども楽しみながら育ってきました。そしてそれらに見え隠れする神々に対する畏敬の念に、子供の頃から魅力を感じてきました。そのため、日本の伝承や怪談に触れると、郷愁のようなものを感じるのです。そこには、古き良き日本の魅力、日本人が神々に対して抱いてきた畏敬の念、日本の伝統のすばらしさがあります。私も古き良き日本の魅力を感じていただけるような作品を作りたいと思って創作しています。