登壇した講演が散々な結果に…アルツハイマー病の進行を妻に実感させた講演会での「驚愕の出来事」
再び舞い込んだ講演依頼
初めての講演とはいえ、散々な結果に終わった以上、もう頼まれることはないだろう――そう思っていたのですが、不思議なもので、しばらくするとまた電話で講演の依頼が入りました。 「主人は、壇上での質問には何も答えられなかったんです」 あわててそう伝えたのですが、 「大丈夫です、ご心配なく」 とのこと。認知症の人と上手にコミュニケーションをとる技術を身に着けた研修委員の先生が、司会を務めることになっているそうです。そんな方がサポートしてくださるなら大丈夫ではないか。安心したものの、晋の意向が気になります。 「一応、本人に尋ねてからお返事します」 私はいったん電話を切りました。そして、 「晋さん、神戸の『いのちの電話』から、講演お願いしますと言ってきたよ。どうするの」 「行くよ」 元気な大声でした。 横浜講演のことが尾を引いているに違いないと思っていましたが、私の取り越し苦労だったようです。本人がやりたいと思うことは、できるだけやらせてあげたい。ましてや、私たちのような者に声をかけてくださるだけでも、ありがたい。 すぐに受話器を手に取り、「行きます」と折り返しました。 『アルツハイマー病の方から“すらすらと”言葉を引き出す会話術!病状を理解して歩み寄る、その話し方とは』へ続く
若井 克子