「ローンを完済する必要はない」SNSで相談が殺到するマンション選びのプロが「今すぐ買うべき」と豪語する理由
高騰著しい都内のマンション市況。購入時だけでなく、堅実な出口戦略まで見据えておかなければ“人生最大の過ち”にもなりかねない。果たして、都心におけるマンション購入戦略の最適解とは? これまでに2000件以上のモデルルームを見学し、「マンションマニア」の愛称で知られるマンション評論家・星直人氏が解説する。
予算5000万円では都心部の物件は厳しい
マンション購入の予算を検討する際、ひとつの目安となる価格が“5000万円”だが、「正直、現在の都心のマンション市況では予算5000万円で理想的な新築・築浅物件を買うことは極めて難しい状況」と、星氏は語る。 「ここまでの高騰ぶりの要因は、やはり建築費が増大化したこと。今の建築価格でマンションを建てるには『坪200万円』が相場と言われています。つまり70㎡の広さのマンションは建築原価で約4000万円かかっている。そこに土地代や販売管理費用が上乗せされて、新築分譲マンションの価格が形成されるわけなので、5000万円はゆうに越えてくるわけです。 夫婦がマンションを一次取得する場合、“今住んでいる賃貸物件や社宅の近くで物件を見つけたい”というケースが多いものの、やむなく沿線をくだっていく選択をする方がほとんどという状況です」
都内ファミリーマンションはペアローンが前提
現在のマンション市況において、共働き夫婦の家探しの現実解となるのが、夫婦それぞれでローンを組む「ペアローン」だと星氏は続ける。 「先ほど例にあげた予算5000万円は、夫がフルタイム勤務で妻がパートで働く1.5馬力、世帯年収が700万円の想定からだした上限額ですが、例えば夫600万円、妻400万円のフルタイム共働きで世帯年収1000万円だと、ペアローンで買える予算は8000万円となり、都内でも選択肢がだいぶ増えます。 実際、私の所に相談に来る方も、現在のマンション市況の説明を聞いて、納得の上でペアローンを選択して予算上限をあげる方が9割ほどです。予算8000万円で選択肢の一例をあげると、大手町勤務の人が南砂町でマンションを買うと、通勤は東西線で約15分、ドアtoドアでも30分程度になります」 ペアローンで借入額が伸びるのはメリットだが、夫婦お互いが債務の連帯保証人になるわけで、加えて子育てによる収入減、離婚リスクを気にする人も多いだろう。 「ペアローンで家探しの予算を上げることに踏み出せない気持ちも理解できますが、いい立地のマンションを買うことは、通勤時間が短縮されて、結果的に『時間を買う』ことになります。特に最近の若い共働き夫婦は『通勤時間は45分以内に納めたい』と考える方が増えています。保育園に預けた子供が熱を出した場合など、どちらかが迎えに行くとなると、60分かかるのは遠いと感じているわけです。 逆に予算を上げず、通勤が負担になる立地で家を買ってしまうと、仕事のパフォーマンスにも影響も出やすい。“通勤時間の短い好立地=今の収入を守る”、という視点を持った追加投資だと思えば合理的ともいえます」 好立地であるということは“資産性も担保される”とも言える。リスクを理解しつつも、攻めの姿勢を持った予算設定がカギとなりそうだ。