裏腹(9月30日)
「腹」。人体で最も大切な部位の一つだからか、慣用句や熟語が数知れず生まれた。まさに腹が膨れるほど。中でも、心の持ちようや決意を表す使われ方が多いようだ▼「裏腹」には負の印象が付きまとう。広辞苑によると、一つの物事の表と裏を表し、あべこべや正反対の意味も。「彼の発言は心と裏腹」とは、「信用できない相手」の言い換えか。世の中、何事も本音と建て前には気を付けねば―との戒めにも聞こえる▼思わず裏腹の言葉がよぎった。南米原産の雑草「ナガエツルノゲイトウ」が県内で初めて確認されたと、県が先月発表した。小さくかれんな白い花は何ともかわいらしいが、裏に恐ろしい素顔を潜めている。繁殖力は極めて旺盛。数センチの茎のかけらからでも根を出し、増えていくというから厄介だ。水路を埋め尽くして水の流れを阻み、田畑に生えれば作物の生育を邪魔する▼「悪魔の雑草」「地球上で最悪の植物」の異名もあり、はびこれば打撃は深刻だ。県は防除の徹底を呼びかけている。腹を据えて駆除しないと、退治はおぼつかなくなる。基本は早期発見、早期駆除。悪名高き「侵略者」にくれぐれも腹を見抜かれぬよう、細心の注意を怠らず。<2024・9・30>