自分と大切な人を守る~かかりつけ医の重要性~
皆さんにとって、信頼できる、いつでも気軽に相談できるクリニックはありますか。自分の命を預けられるかかりつけ医はいますか。 すぐに答えられない人も多いでしょう。それはまだ自分が若く、移動もでき、困ることがないからです。自分の症状を自分で判断して自由に病院やクリニックを探して受診できるからです。定期的に通院している内科のクリニックであれば、そこには薬だけもらいに行くだけのことです。 腰が痛くなったら整形外科を、頭痛があれば脳神経外科を受診するでしょう。若者で、今の地域医療を問題だと感じている人はほとんどいないと思います。 今回の新型コロナウイルス感染症の大流行の際は、発熱患者を診てくれるクリニックが少なくなりました。若くても高齢でも年齢に関係なく、どこに行けばいいのか分からない診療難民があふれました。
◇近くに信頼できるクリニック
若者は体力があるので、何とか医療機関を探して受診できる場合が多かったのですが、体力のない高齢者で自宅から動けなかったり、家から離れた病院に行けなかったりするケースが大変多くなりました。しかし、医療が必要になる場合が多くて病気も悪化しやすいのが高齢者です。 そこで、高齢者や体力のない方にとって、特に受診しやすい医療機関が近くにあることが必要になります。そこは受診のハードルが低い総合診療クリニックであることが理想です。複数の病気をまとめて診てくれたり、急な体調不良にも対応してくれたりする総合診療かかりつけ医を主治医にすることがとても大切になります。 もし自分が80歳を超えたときに、家の近くに信頼できるクリニックがあれば安心です。足が悪い高齢の両親の家の近くに何でも診てくれるクリニックがあれば、これほど安心できることはありません。しかし、さまざまな理由でこういうクリニックが少ないのが現実です。 この問題は、これから30年間くらいの長い時間をかけて浮き彫りになっていきます。専門しか診ないクリニックが都会に増えます。地方ではクリニック自体がなくなっていきます。私は日本の将来がとても心配なので、こうしてさまざまな機会を捉えて総合診療かかりつけ医の必要性を訴えています。