記憶を失い、虐待の痕がある少年を守るため、自分が母親だと嘘をつく

　杏が主演を務め、「生きてるだけで、愛。」の関根光才監督の長編第2作となる映画「かくしごと」が、6月7日に公開されることがわかった。本作は、ひとつの嘘から始まる疑似親子を描く物語。奥田瑛二、中須翔真、安藤政信、佐津川愛美、酒向芳、木竜麻生、和田聰宏、丸山智己、河井青葉らが共演し、オルタナティブロックバンド「羊文学」による書き下ろし楽曲「tears」が、主題歌に決定した。 【動画】「かくしごと」予告編 　本作は、ミステリー作家・北國浩二氏の「嘘」（※「嘘」は正字）を映画化するもの。長年確執のあった父親の認知症の介護のため、田舎へ戻った絵本作家の千紗子は、ある日、事故で記憶を失った少年を助ける。少年に虐待の痕を見つけた千紗子は、彼を守るため、自分が母親だと嘘をつき、一緒に暮らし始める。疑似親子はやがて、本物の親子のようになっていくが、そんな幸せは長くは続かなかった。 　自身も母親である杏は、「今の自分だからこそ、演じることができる」と語り、千紗子役で深い母性を体現。父・孝蔵役には、奥田を配した。認知症を患い、娘のことすら忘れ、日に日に別人のように衰えていく姿を、静かながら胸に迫る演技で表現する。中須が、千紗子が助ける少年に扮する。 　あわせて、「羊文学」の主題歌「tears」が響く予告編とポスターもお披露目。予告編では事故をきっかけに、虐待を受けた少年を守る千紗子の姿が映される。連れ帰った少年の体に虐待の痕を見つけ、匿うことを決める千紗子。事故のときに一緒にいた久江（佐津川）は保護に反対するが、千紗子の決意は揺らがない。 　千紗子が「あなたは私の子どもなの」と、目覚めた少年に“嘘”をつくと、少年はほほ笑みを浮かべ、「お母さん」と呼びかける。認知症の孝蔵と3人で、まるで家族のように過ごしていたが、少年の父（安藤）が現れ、事態は急展開を迎える。何かを隠すようなそぶりを見せる少年、「お前が隠した」と千紗子に詰め寄る孝蔵、海のなかで「ジュン！」と叫ぶ千紗子。ひとつの嘘をきっかけに明かされていくそれぞれの“かくしごと”が暗示されている。 　ポスターでは、本編の撮影中に撮り下ろした写真を使用。千紗子が少年をぎゅっと抱きしめ、覚悟を決めたような力強い瞳を投げかけており、「その嘘は、罪か、愛か」というコピーが添えられている。 　「かくしごと」は、6月7日から東京のTOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほか全国で公開される。関根監督、杏のコメント（全文）は、以下の通り。 ■関根光才監督 　原作を読んで、これは個人的にチャレンジしたい題材だと思ったことが始まりでした。 　千紗子の行動は社会的には許されないですが、過酷な状況にある人を助けたいという気持ちは誰しもが持っているのではないでしょうか。現実には無理だけれど、映画の中でその気持ちが伝えられたり、助けられるかもしれない可能性が提示されたら、傷が癒える人がいるかもしれない、と思いこの映画を制作しました。 　これまでに見たことがない生々しい感情を演じる杏さんが見られる作品です。 ■杏（千紗子役） 　難しいシチュエーションの役だと思いました。 　ただ、もしかしたら、今の自分だったらできるかもしれない、と思い、役に挑みました。千紗子の行動は果たして良いことなのか、悪いことなのか。見ている方も、自分だったらどうするか、など見終わった後誰かと話したくなる映画です。美しい日本の夏が描かれた映像の中で、嘘や愛情がどのような結末を迎えるのか、予想しながら御覧いただければと思います。