西区陥没事故発生から3カ月 「戻れるなら戻りたい」いまだ58人が仮住まい 原因はシールドマシンか?
広島ニュースTSS
ことし衝撃的なニュースだったのが、広島市西区で起きた道路の大規模陥没です。この事故から26日でちょうど3カ月が経ちました。 避難を余儀なくされた住民の今を追いました。 めくれあがったアスファルト。 建物は大きく傾き、壁には亀裂が入っています。 今年9月、広島市西区福島町の交差点で幅15メートル、長さ40メートル、深さ最大2メートルに渡って突然、道路が陥没しました。 【警察官】「直ちに屋外へ出て避難してください」 上下水道や建物12棟などに影響があり、倒壊の恐れもあることなどから付近の住民は避難を余儀なくされました。 【住民】 「家はもう住めない。陥没した当時、自宅にいた。ビシとか、バキとか鳴り出した。古い家なので終わるかな」 住民たちは不安を募らせます。 【住民】 「自宅に帰りたい人がいっぱいいる。いつめどが付くのか?」 「家に入ったらいけないのはいつまで?」 【広島市の担当者】 「一日も早くあらゆる手を尽くして帰ってもらえるよう誠心誠意取り組みたい」 付近の住民は平穏な日常を突然奪われ、住み慣れた家を手放さなければいけない現実に直面しました。 ここに36年前から住んでいる奥江芳勝さんも立ち入りが制限され、自宅へ自由に出入りすることはできません。 【奥江芳勝さん】 「たぶん住めない。壊すのではないか。不安でしかない」 奥江さんは陥没発生直後から親戚の家で避難生活を送り毎日、自宅の荷物を取りに来ています。 【奥江芳勝さん】 「階段を上がるだけで気持ち悪くなる。平衡感覚がおかしい。もう住めない」 自宅の扉は以前のように開け閉めすることはできません。 【奥江芳勝さん】「閉まるけど…」 道路の陥没により建物が傾いたため、家の様々な部分に影響が出ています。 手を触れただけで勝手に空いてしまう窓。 網戸や、ふすまを閉めても隙間ができてしまいます。 ビー玉を床にそっと置くだけで勢いよく転がります。 傾きは、一目瞭然です。 陥没によって一変した日常…。 しかし、この場所には家族との思い出が残されています。 【奥江芳勝さん】 「小学生の頃この部屋で寝ていました。ここが親父の部屋。高校生のときはあちらの部屋で寝た。複雑」 アパートに戻るのが最後になってもいいように…。 必要な荷物をまとめます。 【奥江芳勝さん】「戻れるなら戻りたい」 あの日、何が起きていたのか。 広島市が公表した詳細な調査があります。 新たに全長3.5キロの雨水管を整備する工事、シールドマシンで掘り進んだわずか260mの地点で異変が起きました。 9月26日午前8時45分、シールド内の作業員が水が漏れ出していることを確認。 これはその2分後に撮られた写真です。 下から勢いよく水が迫っています。 シールドマシンは前方の土を中に取り込み隔壁で圧力を調整しながら堀り進みます。 今回は、何らかの原因で内部に水が流れ込んだことで土の中の圧力のバランスが崩れ、地面の陥没が起きたと考えられています。 資料には・事前の地盤調査およびシールドマシン工法は順当な選択であったこと、管理データに異常値はなく施工に問題はなかったという市の調査結果が記されていました。 それでは原因は何だったのか? 先月、1回目となる事故調査検討委員会が開催されました。 関係者によりますと「水がシールドマシン内部に入り込むことは通常ではあり得ない」。 シールドマシン本体が「破損」するなどトラブルが起きた可能性を示唆します。 【事故調査検討委員会・小泉淳座長】 「何が原因かというと機械しかないのかなという気がしますけどね。(今回の)シールド機械に不信を持っているのが私の率直な気持ち」 今後、シールドマシンの内部を確認する必要があるとし、原因究明にはまだ時間がかかりそうです。 陥没が発生して3カ月が経った今も住宅は傾いたまま。 現在も半径50メートルは立ち入りが規制され、31世帯58人がホテルや賃貸住宅などで生活しています。 奥江さんが今、暮らしているのは業者が提供する賃貸マンション。 ここでの生活が2カ月間も続いています。 【奥江芳勝さん】 「狭い荷物が置けない。荷物を置いたら圧迫される。ここしか部屋がない」 奥江さんは以前、ガスコンロを使っていましたが、この家のキッチンはIHで対応する調理器具がなく、料理を作れません。 【奥江芳勝さん】 「ご飯は親戚の家で食べる。寝るだけ。どう見ても窮屈でしょ」 広島市は、現在、市営住宅から避難している17世帯に新しい住み替え先を案内しています。 新居が決まった奥江さんは、広島市の担当者と部屋の内覧を行いました。 【西区役所建築課・堀田康博主事】 「古い住宅で風呂の細かい温度調整ができないバランス釜式の風呂」 新居は築60年のアパート。 設備も決して新しいといえません。 【奥江芳勝さん】 「前はボタンを押したら湯がたまって追いだきができた。ガスをつけて湯を触りながら(温度調節して)風呂に入らないといけない。満足か満足じゃないかと言われたらしょうがない。早く次の家を決めたい」 奥江さんの入居は来年1月以降になる予定です。 そして、奥江さんが以前住んでいたアパートについては倒壊する恐れがあるとして今月中旬、広島市が解体する方針を固めました。 以前のような生活に戻ることができるのか…。 住民の不安は新居が決まった今も続いています。 【奥江芳勝さん】 「懐かしい。もう住めない。戻りたい」 《スタジオ》 今後の原因究明ですが、陥没を防ぐためにシールドマシン内部は水で満たされた状態になっています。 広島市は今後実際に中に入って原因を調査する方針で、水を抜くためには「方法の一つとして」シールドマシンのまわりを固める作業などが検討されています。 この工程には「10か月程度」見込まれるということで、一日も早く住民が安心して暮らせる環境が求められています。
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