「退職代行サービス」できることは“伝言”だけ? トラブル続出の退職時、弁護士が警鐘を鳴らす意外な盲点
■民間業者だけじゃない退職代行、それぞれのメリット・デメリット
――退職代行を依頼する場合、いくつかの依頼先があると聞きました。それぞれができることを教えてください。 【民間の退職代行サービスの場合】 「基本は、退職の意思や退職まわりの手続きについての意向を『伝える』だけです。会社側がこれに応じて、スムーズに手続きをしてくれれば、退職が実現できることになります。ただ、退職日について話がまとまらないとか、有給消化を認めてくれないなど、話が難航して民間業者が『交渉』を始めてしまうと、それは非弁行為になります。また、退職の意思を電話で伝えようとした際に、『本人でも弁護士でもない人間の話は聞かない』『本当に本人の意向かわからない』と電話を切られてしまい、そもそも退職の意思表示自体できていないということも。逆に、『拒否されてしまったので、これ以上の対応はできません』と言ってくる業者は、法的にクリーンな業者と言えるでしょう」 【弁護士の場合】 「弁護士であることを示して、電話や書面で、退職の意思表示や交渉を行います。『本当に本人の意向かわからない』と言われた場合、本人からの委任状を示すこともできます。有給消化や即日退職についても、法律や社会保険料等の負担を踏まえて、会社を説得していくことが可能です。また、『急に辞めるなら最後の給料は払えない』『こちらも困るから損害賠償請求する』と、退職以外の部分が問題化することもあります。ほかにも、何らかのハラスメントや長時間残業が退職原因の場合の対処など、様々な問題をはらむのが退職時。弁護士はこのような法律業務に関してすべて対応できます」 【労働組合の場合】 「労働組合には、労働問題に関する団体交渉権が認められています。そのため、民間業者と違い、有給消化や退職日などについて交渉をすることもできます。ただ、組合や担当者によっては、法的な知識の面や交渉のつめ方の面が不十分な場合があり、実際、会社側が退職届を受理しないなどと強弁した際に話を進めることができず、あらためて弁護士に相談に来た方もいます。適法であっても、弁護士と同等の対応ができるとは言い難い面があるということです」