<センバツここに注目>1年春で広陵の背番号1 「ふてぶてしい」高尾響が抜てきされた理由
3月18日に開幕する第95回記念選抜高校野球大会。主役候補の注目選手を担当記者が紹介します。広陵(広島)の高尾響(ひびき)投手(1年)は昨秋はけがの影響で登板が限られましたが、センバツ優勝3回の名門に現れた逸材です。 【第95回センバツ出場決定 各校の喜び】 ◇「背番号で野球をやるわけではない」 昨年、還暦を迎えた中井哲之監督が笑い声を上げながらその印象を語る。「今時、こんなのがおるんかと。ふてぶてしい。度胸満点。(雰囲気が)昭和じゃ、昭和」 福岡県粕屋町出身で、中学時代は飯塚ボーイズ(福岡)でプレーした。昨春の入学後まもなく、練習試合のマウンドに立った。毎年恒例のいわゆる「肝試し」。上級生相手に普通は緊張から投球がままならないという。だが、高尾投手に限っては様子が違った。打者と真っ向から勝負する負けん気の強さがあった。 そのまま実戦で結果を残し、春の中国大会で背番号「1」を渡された。広陵を率いて30年以上で、春優勝2回、夏準優勝2回の中井監督も「初めて」という入学後約2カ月でのエースの誕生だった。一方、本人は「背番号で野球をやるわけではないので」と平然としていたというから憎い。 最速145キロの直球が低めに伸びてくるのが特徴。昨秋もエースとして躍動したが、広島大会後に右足の疲労骨折が判明した。それにもかかわらず、続く中国大会も「投げます」と言って聞かなかった。最終的には周囲の説得に納得し、1試合だけの登板にとどめたが、明治神宮大会ですぐに復帰。新たに習得したスプリットを武器に3試合計12回を投げ、失点1。16三振を奪う圧倒的な投球を披露した。 身長172センチと大柄ではない。比較対象として名前が挙がるのがOBの野村祐輔投手(広島)だ。ただし、中井監督は「高校時代を比べれば野村よりこっちが上」と言う。 マウンド上での挑むような表情から一変、グラウンド外では先輩と好きな漫画の話でキャッキャと声を上げる一面もある。男5人兄弟の末っ子として育った「愛され力」も天性のものか。 明治神宮大会ではけがの影響もあり、背番号は「11」だった。「気にしない」と言っていた背番号だが、「エースとして投げたい気持ちはあります」。鼻っ柱の強さにどこかノスタルジーを感じさせる。【生野貴紀】