レミ・ウルフが語る、ファンキーソウル新世代の成長過程
肉体にも感情にも訴えかける音楽
カリフォルニアで育った子供時代、ウルフの母親はプリンスをはじめとする80年代ポップスの巨人たちをよくかけていた。一方、父親はAC/DCやガンズ・アンド・ローゼズを好んで聴いていた。自分でレコードを選べる年齢になって彼女が最初に買ったアルバムは、リンジー・ローハンの2004年のデビュー作『Speak』だった。 ウルフは『Big Ideas』を、主にニューヨークのダイヤモンド・マイン・スタジオとエレクトリック・レディ・スタジオのヴィンテージ機材を使って録音し、ソウルフルなアプローチを新たに取り入れた。シングル曲「Cinderella」にはホーン・セクションが導入され、70年代にスティーヴィー・ワンダーが演奏したのと同じローズの電子ピアノも使われている。他の曲には、純粋なシンセ・ファンクの魔法や、燃え上がるゴムや塩素やタンジェリンのごとく体に訴えてくる感覚がある。ウルフは彼女の世界をただ聴いてほしいだけではない。味わい、触れ、嗅いでほしいのだ。「私が体験したことを表現しようとしてる」と彼女は言う。「私たちは、食べたり、キスしたり、触ったり、匂いを嗅いだりする世界に生きているから」。 曲そのものは通常、少なくとも紙の上では、1時間から5時間で形になる。曲のインスピレーションとなる出来事には、もっと長い時間がかかっている。「真実からかけ離れた絵は描かないようにしてる」とウルフは言う。「そういう意味で、自分が登場人物を演出しているようには感じない。登場人物たちが私を演出しているように感じるし、私の人生に関係のある人々は、私のすること、何について書くか、私がぶらつく場所、夕食をとる場所に影響を与えてる」。 新しいアルバムのハイライトのひとつ「Alone in Miami」で、ウルフはアート・バーゼル(マイアミで開催される米国最大のアートフェア)へのひとり旅の経験を語っている。「そこらじゅうコカインだらけで、初めて会う人たちに出会って、新しい友だちを作るの。でも、それらはすべて、ある種の精神病的で躁病的な、コカインの熱の夢のもとにある」。ウルフは18歳のときからパーティを続けてきたが、この10年でそれをほぼ卒業したように感じている。「私の中にはまだ暴れたがっている獣がいるけれど、だいぶおとなしくなった」と彼女は笑いながら言う。 日常に一定のルーティンを取り入れることで、ウルフは肉体的にも感情的にも、より今を生きていると感じられるようになった。私たちが話したとき、ニューヨークに来て4日目だった彼女は、1日の目標である「2時間の散歩」「ヨガをする」「コーヒーを飲む」のすべてをまだ達成できていなかった。「常に自分の気持ちについて考えなければならないとき、地に足がついていると感じるのは難しい」と彼女は言う。 彼女はひとりでヨガに行くことさえ、最初のうちは自分を叱咤激励しないとできなかったという。「私の仕事は自分自身を知り、理解すること。すごい任務だけれど、くたびれる任務でもある。ただただ自分自身のことを考えたくないときもたまにはあるんだよね」。 --- 『Big Ideas』 レミ・ウルフ 発売中 FUJI ROCK FESTIVAL’24 2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場 ※レミ・ウルフは7月26日(金)出演
Larisha Paul