６０年１０月、日米野球の歓迎レセプションでジャイアンツのメイズ（左）と乾杯する長嶋さん

　メジャー３２９３安打を誇る伝説的な外野手のウィリー・メイズさんが１８日（日本時間１９日）、死去した。９３歳だった。米大リーグ機構が発表した。メジャーリーグ通算６６０本塁打を放ち、守っても１２年連続ゴールドグラブ賞を獲得した「史上最高の万能選手」と呼ばれた男の死去に全米が悲しんだ。 　＊　＊　＊　＊ 　父親も黒人リーグの選手だったメイズさん。ジャイアンツでのメジャーデビューは、さながら荒波の中での船出となった。最初の２６打数で１安打の不振。Ｌ・ドローチャー監督に告げた。「マイナーに戻してください」。指揮官は背中を押すように「君が打てなくてもチームは勝っている。明日もあさってもずっと君はセンターを守るんだ」と返答。自信を回復し、着実に階段を上っていった。 　１９５０年代半ばには押しも押されもせぬスーパースターになった。５８年、ジャイアンツが本拠をサンフランシスコに移転。高級住宅街に引っ越そうとすると、白人住民の猛反発を受けるなど、その時代の背景もあって悲哀も味わっている。 　それでもグラウンド上で見せる攻守走に渡る活躍に、誰もが魅了された。特に黒人の野球少年にとっては憧れの存在。Ｋ・グリフィーＪｒ．、Ｂ・ボンズらもメイズが着けていた背番号２４を着けた。ボンズはパイレーツからジャイアンツにＦＡ移籍した際、２４番を要求。しかし、ジャイアンツの永久欠番だったことで地元ファンが猛反発し、２５番に落ち着いたのも有名な話だ。 　不運だったのは、朝鮮戦争による兵役で５２年がわずか３４試合出場にとどまり、翌年は全試合欠場と、単純計算で２７４試合出場できるチャンスを失ったことか。成長期だったことを考えれば、それがなければ通算７１４本塁打のベーブ・ルースの記録を、負傷のため兵役を免れたＨ・アーロンより先に破ったのはメイズさんだというのがメジャーの通説となっている。 　〇…メジャー通算７６２発の最多本塁打記録を持つバリー・ボンズ氏は、メイズさんの死去に哀悼の意を示した。父のボビーさんがジ軍でメイズさんと同僚だった縁で、自分の名付け親になった。「あなたは私を今の私に形作ってくれました。私のゴッドファーザーであり、いつもそばにいてくれてありがとう。（死んだ）父を大きくハグしてください。私は永遠にあなたを愛しています」とＳＮＳに投稿した。オバマ元大統領や俳優のビリー・クリスタル、元テニス選手のビリー・ジーン・キングさんらもコメントを寄せた。 　〇…メイズさんは１９６０年と７０年（春）の２度、日米野球で来日。６０年、第１戦の前日に、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督と報知新聞紙上で対談した。長嶋さんは「あなたの名前こそ僕らにとってはあこがれですよ」と話していた。７０年の再戦の時には長嶋が本塁打、メイズさんが３安打を放った。 　◆ウィリー・メイズ（Ｗｉｌｌｉｅ　Ｍａｙｓ）１９３１年５月６日、米アラバマ州生まれ。黒人リーグ在籍時の５０年にジャイアンツが獲得。５１年に新人王、約１年半の兵役から戻った５４年には首位打者を獲得しＭＶＰ。本塁打王と盗塁王をともに４度。５７年から始まったゴールドグラブ賞は１２年連続受賞。７２年にメッツに移籍。翌年ワールドシリーズ出場を最後に引退。７９年に野球殿堂入り。現役時代は１８０センチ、８０キロ。右投右打。