クマ近寄らせない 昨年、人身被害あった富山・熊野 住民が対策委結成
昨年秋にクマによる人身被害が起きた富山市熊野地区で、地元防犯団体が中心となり、クマを寄せ付けない環境づくりに乗り出した。対策委員会を結成し、餌となる柿の木やすみかになる草木が生い茂った屋敷林など危険な場所を調べ、所有者に伐採や撤去を呼び掛けている。専門家は「即効性のある対策でクマを近寄らせない効果が期待できる」と地域独自の取り組みを推奨している。 熊野地区は富山市南部の熊野川沿いの田畑が広がる平野部で、昨年10月に江本(えのもと)の自宅庭で70代女性がクマに襲われ死亡した。地区内の安養寺の民家納屋でも70代男性が襲われ、顔などに全治1カ月のけがを負う被害が起きた。熊野小では銃を持った猟友会員が児童の登下校を見守る厳戒態勢が敷かれた。 市内では今年に入ってからも、6月に男性がクマに襲われ重傷を負う被害が起きている。熊野校下防犯組合連合会は昨年の被害を教訓として、7月上旬に地元の自治振興会や町内会に協力を求めてクマ対策委員会を結成した。 ●屋敷林など調査、伐採呼び掛け 子どもの安全確保を最優先とし、熊野小近くの森田、宮保(みやのほ)、安養寺の3町内から調査を始めた。学校周辺で草木が深々と生えている民家、河川敷がやぶで覆われた土川(どがわ)などを確認し、早急に対策を講じる。柿の木は熊野川沿いや民家敷地に多数あり、所有者に伐採や実の除去を呼び掛けている。 調査は年度内に熊野地区の全33町内で行われ、クマが出没する可能性が高い場所を記した地図を作成し、住民に周知する。PTAと連携してパトロールの態勢を強化するほか、クマ出没時に素早く情報共有できる仕組みもつくる。 熊野校下防犯組合連合会の堀江貞夫会長(66)は「死傷者が出ているにも関わらず危機感の薄さが目立つ。地域一丸となって被害を防がなければならない」と話した。 富山県によると、県内の今年のクマ出没件数は今月15日時点で前年同期比69件増の210件に上り、人身被害は1件起きている。6月に富山市西小俣の80代男性が自宅付近でクマに襲われ、頭や顔の裂傷と右鎖骨骨折で全治約1カ月の重傷を負った。 ●「地域で積極対策を」ねいの里の専門家 クマの生態に詳しい県自然博物園ねいの里(富山市)野生鳥獣共生管理員の赤座久明さんは熊野地区の活動について、「柿の木の除去、やぶ刈り、屋敷林の整備はクマを近づかせないために効果がある」とした。 熊野地区で昨年、クマの出没や人身被害が相次いだ原因については、餌を求めて熊野川を下ってきたクマが屋敷林にすみ着いて柿の実を食べようとうろつき、遭遇した人が襲われたと説明した。 県内の平野部に出没するクマは大半が柿の木を探しにやって来ているとし「他の地域でも積極的に対策を進めてほしい」と話した。