イスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状 国際刑事裁判所、戦争犯罪容疑で
オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は21日、パレスチナ自治区ガザ地区での紛争における戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相、イスラム組織ハマスのムハンマド・デイフ司令官に逮捕状を出した。 ICCは、イスラエルとハマスの戦闘において、ネタニヤフとガラントが「飢餓を戦術として用いた」ことなどについて「刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠がある」と発表。両人が指導者として「ガザの一般市民人口を部分的に壊滅させることを目的とした生活環境をつくり出した」とした。 また、ハマスの軍事部門トップで、イスラエルが今年7月の空爆で殺害したと主張しているデイフについては、2023年10月7日のイスラエル越境攻撃に絡んだ殺人、拷問、レイプ、人質拘束などが人道に対する罪と戦争犯罪に相当すると判断した。 逮捕状は今年5月、ICCの検察部門がイスラエルとハマス双方の複数の指導者に対して請求していたもの。カリム・カーン主任検察官は当時、ネタニヤフとガラントについて、ガザにおいて「絶滅を引き起こした」容疑で訴追されると述べていた。 これを受けてイスラエル外務省は9月、ICCの管轄権に異議を申し立て、ICCが逮捕状請求前にイスラエルに調査の時間を十分に与えなかったとも訴えていた。しかし、ICCはイスラエルの異議申し立てを却下した。 イスラエルのギデオン・サール外相はICCを非難。逮捕状を出したことで「その存在と行動の正当性を完全に失った」とし、「中東の平和、安全、安定を損なうため活動している最も過激な勢力に奉仕する政治的な道具」と化したと主張した。一方、イタマル・ベングビール国家治安相は、逮捕状を「前代未聞の不名誉だが、まったく驚くことではない」と評した。 ■ネタニヤフは逮捕されるか 2002年に設立されたICCは、国連と協力関係にあり、ジェノサイド(集団殺害)、人道に対する罪、戦争犯罪に問われる個人を訴追する権限を有するが、逮捕状を執行する権限はない。逮捕状の執行には、ICCの管轄権を認める他国(ICC加盟国)の協力が不可欠だ。米国や中国など、ICCの管轄権を認めていない国もあり、こうした国は逮捕状執行の義務を負わない。ネタニヤフは7月に訪米して連邦議会で演説しているが、今後も米国内で逮捕されることはないだろう。 ICC加盟国であっても、必ずしも逮捕状が執行されるとは限らない。たとえばモンゴルは加盟国だが、ロシアのプーチン大統領が9月に同国を訪問した際、ウクライナとの戦争における戦争犯罪容疑でICCから逮捕状が出されているにもかかわらず、逮捕しなかった。 米国はかねて、ICCがネタニヤフに逮捕状を出せば中東和平交渉が頓挫するとして警告していた。ジョー・バイデン大統領は、イスラエルとハマスの双方の指導者に対して同様の罪状で逮捕状を請求するなど「言語道断だ」とし、「イスラエルとハマスは決して同じではない」と主張。アントニー・ブリンケン国務長官も、「人質を解放するための停戦合意に向けた現在進行中の努力を危うくする」とICCの逮捕状請求を批判していた。
Ty Roush