「育休3年」は女性の仕事復帰を後押しするか?
安倍首相は4月19日、経済3団体トップとの会談のなかで、「育児休業3年」を推進するよう協力を求めました。法的義務ではなく企業の自主性に委ねるものです。首相は、自身が進める成長戦略の一環として、新たな助成金などを作るなどして企業をサポートする考えを示しています。一方で当事者である女性や企業からは、「非現実的だ」などと疑問の声も挙がっています。 現在は、育児・介護休業法によって最長1年半の育児休暇が認められています。その間、休業前賃金の50%がもらえます。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると平成23年度の女性の育休取得率は87.8%でした。企業のなかには、すでに1年半以上の育児休業を認めているところもあります。たとえば、資生堂では子どもが満3歳になるまで最長3年間まで休業を延長することができます(4/18付日本経済新聞)。
今回、首相が「育休3年」を打ち出した背景には、アベノミクス3本の柱の1つである成長戦略の中核、女性の社会復帰を後押しする政策がありました。 首相は4月19日の「成長戦略スピーチ」でこう述べています。「妊娠・出産を機に退職した方に、その理由を調査すると、『仕事との両立がむずかしい』ことよりも、『家事や育児に専念するため自発的にやめた』という人が、実は一番多いのです」「3歳になるまでは男女が共に子育てに専念でき、その後にしっかりと職場に復帰できるよう保証することが必要です」。首相は、待機児童対策や育休中の在宅勤務制度についても、あわせて推進していく意向を示しています。 女性の選択肢が増えることを歓迎する声がある一方、課題も指摘されています。 企業側の負担は大きくなるでしょう。育休取得者を雇用しながら新たな人員を雇用すれば、採用計画から人件費の配分まで見直す必要が出てきます。産経新聞経済本部編集委員の早坂礼子氏は「人員に余裕のない中小企業ではより難しいだろう」「本当に復社するかどうか分からない人を3年間待つことへのリスクも見逃せない」と書いています(5/14付SankeiBiz)。 女性からも疑問の声が挙がっています。たとえば「3年も仕事から離れたらキャリアやスキルが失われる」といった意見です。3年の育児休業を認めている企業でもフル取得する利用者は少ないとの実情もあります。キリンビールは3年まで休業延長を認めていましたが、利用者が少ないため2006年に2年に短縮しています(4/18付日本経済新聞)。 「育休3年の前に男性の育児参加が必要」という意見もあります。平成23年度の男性の育休取得率はわずか2.6%でした。女性の仕事復帰を促進するには、男性も含めた育休やサポートのあり方を考える必要がありそうです。