マスク氏ら「年77兆円の歳出削減」 国際機関への拠出金カット
トランプ次期米政権で政府外の助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」を率いる実業家のイーロン・マスク、ビベック・ラマスワミ両氏は20日、少なくとも年間5000億ドル(約77兆7000億円)の歳出削減を目指すと表明した。国際機関への拠出金を削減し、政府機関の余剰人員を減らすために民間企業への転職を促す方針も明らかにした。 マスク、ラマスワミ両氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに連名で寄稿した。DOGEの役割は、連邦政府の規制撤廃、行政部門の縮小、歳出削減の3本柱だと説明。「大統領選で決定的な負託を受けたほか、連邦最高裁は保守派の判事が多数派を占めており、連邦政府を縮小させる歴史的な機会だ。中央政界の既得権益層からの攻撃に対する準備はできている」と強調した。 規制撤廃に関しては、曖昧な法律の規定に関して行政当局の解釈権限を制限した2024年の最高裁判決などを挙げて、「現行の連邦政府による規制は、議会が法律によって与えた権限を超越している」と指摘。過剰だと判断した規制のリストを作成し、トランプ次期大統領に提出し、大統領権限で規制の見直しや撤廃を進めるとした。 また、規制撤廃と並行して、政府機関の運営に「最低限必要な人員」を精査する。「現行の規制や新たに作る規制が減れば、業務も減る」として人員削減を進める方針だ。公務員の身分保障規定に配慮し、民間企業への転職を支援したり、早期退職に応じた場合に退職金を上乗せしたりするとした。 一方、マスク氏が従来「2兆ドルは削減できる」としてきた歳出削減の目標額は、5000億ドルに下方修正した。削減対象として、国際機関への15億ドルの拠出金、地方の公共ラジオやテレビ局を支援するNPO「米公共放送社(CPB)」への5億3500万ドルの支援、人工妊娠中絶の権利を擁護するNPO「プランド・ペアレントフッド」など「進歩派の団体」への約3億ドルの支援などを例示した。 トランプ氏の選挙戦での主張に沿ってマスク氏らも公的医療保険の縮小には否定的で、政府の無駄遣いや不正を取り締まることで歳出削減に努める姿勢も示した。 DOGEはホワイトハウスの行政管理予算局(OMB)と連携し、建国250周年を迎える26年7月までに一連の改革を行う計画だ。マスク氏がオーナーのX(ツイッター)を通じて「小さな政府の実現を目指し、知能指数(IQ)が非常に高く、週80時間以上働く意思のある革命家」をスタッフとして募集。応募者のうち「トップの1%」の中から、マスク、ラマスワミ両氏が選考するとしているが、実際にどれだけ集まっているかは不明だ。【ワシントン秋山信一】