トルコのクーデター失敗 政権が黒幕とみる「ギュレン派」とは?
トルコで現地時間15日夜に国軍の一部兵士らによって起こされたクーデターの試みは、日付が変わった16日になってクーデターの参加者が次々に投降し始め、16日正午にはエルドアン政権が「クーデターは失敗に終わった」と公式に発表した。クーデターに関与したとして、約3000人が逮捕されたが、エルドアン派と反エルドアン派の対立はトルコ国外にも大きく知れ渡った。クーデターの背景には何があったのだろうか。 【写真】「独裁」懸念も……なぜトルコ大統領は強権手法を取るのか?
初めてではないクーデター「苦しむのはいつも市民」
「夜間の外出禁止令が出され、正直怖かったです。私は外に出ることはありませんでしたが、多くの市民がクーデターに反対する意思を見せて、外に出ていたため、彼らが無事なのかどうかも気になりました」 イスタンブール在住のバヌ・ミッチェルさんは、クーデターを試みた兵士が市内に侵入してきた際の様子を振り返り、状況が分からないまま時間だけが過ぎて行ったことに不安を覚えたと語る。
近年、強権体制が進み、独裁色が増しているとの批判が国内外で渦巻いていたエルドアン大統領に対し、トルコ国内では一部の軍・政府関係者からも大統領の権力増大を危惧する声が出ていた。イスタンブールとアンカラで反政府派の兵士らが試みたクーデターでは、市民や警察官161人が死亡し、反政府派兵士とみられる104人も殺害されている。負傷者は1400人以上と伝えられている。260人以上が死亡し、現在までに2839人の兵士(多くは投降した兵士)や将校がクーデターに加担した容疑で逮捕された。また、トルコ国営メディアは2745人の裁判官も職を解かれたと伝えており、国内では依然として混乱が続いている。 首都のアンカラでは上空をヘリや戦闘機が飛び交い、飛行中のヘリから地上の市民に向けて機銃掃射が行われたシーンは世界中のメディアで繰り返し報じられた。また、議会ビルに向けて爆発物が繰り返し投げつけられた。反政府部隊の動きに対し、多くの市民が抵抗を見せ、反政府派の兵士が装甲車から引きずり出される瞬間をとらえた写真や動画も、SNSですぐさま世界中に拡散された。 クーデターが始まった頃、エルドアン大統領は休暇でトルコ南西部のリゾート地マルマリスに滞在していたが、マルマリスでも爆発が発生したと複数のメディアは伝えている。当初、エルドアン大統領の動きが伝えられず、亡命の準備をしているといった未確認情報も報じられたが、CNNトルコの番組に電話出演。iPhoneのフェイスタイム機能を使った臨時のテレビ中継が行われ、その中で「クーデターに参加した者は重い代償を払うことになる」と反政府派兵士らを強く非難した。エルドアン大統領はその後、航空機でイスタンブールに到着。報道陣に対して、自身がマルマリスで暗殺の標的にされたと語っている。 クーデターが失敗に終わり、次々と逮捕者が出るなか、日付が変わった17日未明のイスタンブールの様子を、現地の旅行代理店に勤めるアンカ・ベンリさんが話してくれた。 「日付が変わって、今は17日の午前1時を回ったところですが、エルドアン大統領が街に出てクーデターが失敗したことを祝ってほしいと市民に呼び掛けたため、今でもイスタンブール市内ではクラクションを鳴らした車が何台も走っています。ただ、市民や兵士に犠牲者が出たため、私自身は素直に祝福できるような気分ではありません。トルコでクーデターが発生したのは、これが初めてではありません。辛い思いをするのはいつも市民で、今回のクーデターでも結果的に一番得をしたのはエルドアン大統領自身ではないでしょうか」