「なぜ設置するのか」「かわいそう」…クマ出没相次ぎ設置した"箱わな" 役場に苦情相次ぐ「気がめいる」担当者は困惑も理解求める 北海道乙部町
北海道南部の乙部町の住宅の近くに3月11日から10日連続でクマが目撃されていましたが、20日を最後に姿を消しました。落ち着きを取り戻した…と思いきや、町には箱わなの設置を巡って苦情の電話が相次いでいました。 11日午後2時30分ごろ、乙部町豊浜の国道脇にこつぜんと姿を現したクマ。 付近では10日連続で同一の個体とみられるクマが目撃されました。 クマは体長約1.2メートルで、付近の住民によりますと山の斜面には行者ニンニクやフキノトウなど山菜が生えているといいます。 クマの出没が相次いでいることを受けて、町は13日と15日に箱わな2個を設置。20日を最後にクマは目撃されていませんが、26日時点で捕獲はされていません。 しかしこの箱わなを巡って、町には連日、苦情の電話が相次いでいるということです。
町の担当者によりますと、13日から22日で10数件の苦情電話やメールがあり、道内外の個人や団体のほか、名前を名乗らないケースもあると言うことです。 苦情の内容は… ・「なぜ箱わなを設置するのか」 ・「クマがかわいそう。殺さないでほしい」 ・「動物を何だと思っているのか」 ・「箱わなを撤去してほしい」 一方、クマなどの対応をする町の担当部署の人員は計3人。電話の対応時間は20分から1時間ほどにも及びます。 職員はデスク業務のほかに会議などで外勤をすることも多く、苦情の電話対応で業務に支障が出るといいます。 町の担当者は「気がめいってしまう。私たちもやりたくてやっているわけではない。住民が安全に暮らしていくために対策を講じているだけなんです」と困惑した様子。 23日から苦情の電話などはないということですが、また相次ぐ場合は対応策も検討していきたいとしています。 同様の事案はほかの地域でもあります。
北海道東部の標茶町や厚岸町で牛66頭を襲い続けた「OSO18」が2023年7月に駆除されました。 その後、駆除したハンターや自治体に対し「なぜ殺したのか」「クマがかわいそう」「他に方法があったのではないか」などといった苦情が数十件も殺到。 「人や農業などの被害防止のため、やむを得ず捕獲する場合があります。この捕獲は地域の安全に欠かせないもの。捕獲への非難は、その担い手確保の支障となりかねません」
これを受け、北海道が2023年9月、X(旧ツイッター)に投稿。ヒグマ有害捕獲への理解を求めました。 2023年、北海道でのクマ目撃は過去最多となる4055件で、2022年過去最多だった2240件の約1.8倍と大幅に増えました。 クマとの共生はどのような形が理想なのか。行政の模索が続いています。
UHB 北海道文化放送
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