条例守ったら宿泊予約サイト非掲載? 京都市が米大手に異議も応じず、順守で「低評価」の施設も
民泊仲介大手の米エアビーアンドビーが運営する宿泊予約サイトに、京都市が条例で禁止している非対面のチェックインができるかのような文言が掲載されているとして、市が同社に記載内容を改めるよう申し入れしていたことが、このほど分かった。同社は「個別の地域事情に沿った対応は難しい」として応じない方針だが、市にサイト運営者への指導権限はないといい、条例を順守する施設から不満の声も上がる。 【写真】京都の新ホテル「まるで夜の図書館」 ■米社「変更する義務はない」 京都市内では旺盛なインバウンド(訪日客)需要を受け、住宅密集地でも簡易宿所や民泊の営業が目立つ。宿泊客と近隣住民とのトラブルを防ぐため、市は2020年4月に全面施行した改正旅館業適正化条例で、全ての宿泊施設に原則としてフロントでの対面チェックインを義務付けた。 だが、同社の宿泊予約サイトでは宿泊施設を「セルフチェックイン」で検索することができ、京都市内でも千軒近くヒットすることもある。市は「全てが条例で禁じている非対面のチェックインとは限らない」としつつも、2度にわたって日本法人のエアビージャパン(東京)に電話で「条例違反を疑わせる記載内容は改めてほしい」と申し入れた。だが、市によると、同社は「全世界で共通のプラットホームを使用しており、京都市だけ変更するのは莫(ばく)大な費用がかかる。変更する法的義務もない」などとして応じなかったという。 ■「条例守って不利益はおかしい」憤り 非対面のチェックインは時間や手間がかからないため、旅行者に人気だ。そのため、条例を順守して対面チェックインを行う施設は「サイト上で低評価をつけられている」と頭を悩ませる。 下京区の宮本博昭さん(42)が経営する簡易宿所は3~4月の約2週間、同サイト上で強制的に非掲載になった。宮本さんは「セルフチェックインをしていないという低評価が続いたために、非掲載になったのではないか。条例を守っている施設が不利益を被るのはおかしい」と憤る。施設の予約はほぼ全て同社のサイトを経由しており、その間は予約が入らずに売り上げにも影響したという。 同社は市に対し、「条例を守ったことで、非掲載にすることはない」とした上で、個別の事案には「答えられない」と回答している。京都新聞社の取材には「対面チェックインのルールを順守するよう、リスティング(宿泊施設)のページなどでゲスト(宿泊客)に伝えることを引き続き要請する」とした。 市医療衛生企画課は「宿泊予約サイトの内容を指導する権限は市にはない。施設の立ち入り調査などを通じ、非対面のチェックインが行われている場合は指導したい」としている。