映画賞を席巻中! なるか『ラ・ラ・ランド』以来のオスカーゲット! エマ・ストーン【ハリウッド アノ人のホントの顔】
「腰に手を当てるとかポーズを取るのって滑稽でしょ?」
――エマの取材はどの作品で? 渡辺 それが、彼女はミスキャストだろうと思った『L.A.ギャングストーリー』(13)なんですよ。エマとは『ゾンビランド』(09)でも組んでいるルーベン・フィッシャーの作品で、彼は「これまで高校生のような役ばかりやってきたエマが、(この映画で)大人の女性になれたことにとても興奮した」と言っていました。「エマは素晴らしい女優」と大絶賛していましたが、本作のファムファタルっぽいギャングの情婦グレイスの役には、当時24歳の彼女はちょっと若すぎる感じ。背伸びしてる感がしましたね。 ――彼女のインタビューはどうだったんですか? 渡辺 エマのポリシーは“仕事の話はするけどプライベートのことは一切話さない”なんですよ。今はどうか知りませんが、デビューしてからそれは守ってきたようです。だからこのときも、そういう話はほとんどしてません。 唯一自分について語ったのが、「私はまだ自分の居場所を見つけようとしてる。ちょっとグラグラしているから。だから、自分が一番居心地がいいのはどこなのかを学ぼうとしているし、どれだけ自分がクリエイティブでいる必要があるのかを学んでいる」ということ。 この「自分がクリエイティブでいる~」というのは、「デビューしてずーっとオーディションばかりを受けてきて、最近になってやっと作品を選べるようになり、そのラッキーに圧倒されそうだから」と言っていましたね。この後彼女が大ブレイクする『ラ・ラ・ランド』の主人公みたいだったということなんだと思います。 おそらく『ヘルプ~心がつなぐストーリー』(11)や『アメイジング・スパイダーマン』(12)に出演し、演技力と人気が認められ始めたんでしょうね。 ――「居場所」というのは、住む場所も含めてなんでしょうか。 渡辺 ロスからニューヨークに引っ越して、またロスに戻ったという時期だと言っていました。ただ、ロスに関しては、「以前、ロスに住んでいるときは問題がなかったんだけど、今の状態でロスに住むのはちょっと事情が違ってくる。映画関係者がたくさんいるから、パパラッチもたくさんいて、ちょっと……」と言っていたので、やはり人気が出てきたんだと思います。 ただし、こんなことも言っていました。彼女の役どころは女優を目指してハリウッドにやってきたにもかかわらずギャングの情婦になってしまった女性なので、考えるところはあったようです。 「私もグレイスと同じような思いでハリウッドに来たわけだから、実はいろいろ考えたの。彼女は、ドアを開けたらパパラッチがいるというような生活をしていないので、そういうことに対するありがたみが分かったというところはある。女優の卵の場合、夢は叶わないことの方が多いから」 ――名前の知られるような女優になるのは大変だからですね。 渡辺 そう言われてますね。でも彼女は人気スターになりたいわけじゃないようで、レッドカーペットでのポーズにもこだわりがあるようでした。 私の印象のエマは、とてもおしゃれな人。レッドカーペットの写真などを見るとセンスがいいと思うんですが、彼女、写真に収まるとき、女優っぽいポーズをまるで取らないんですよ。その理由については、「だってポーズを取るのは滑稽でしょ? 写真のとき、カメラマンに腰に手を当ててと言われることがあるんだけど、そんなとき私、笑っちゃうのよね。そんなおかしなポーズ取れないって(笑)」 ――言いますねー(笑)。 渡辺 ちゃんと仕事をしているという自負があるから言えるんだと思いますよ。女優であることを発揮するのはカメラの前だけでいいと考えているのかもしれないし、人気スターであることを意識はしていないという意志表示なのかも。 ――彼女の次回作は? 渡辺 三度ランティモスと組むようです。『Kinds of Kindness』という作品で、脚本は『ロブスター』や『聖なる鹿殺し』(17)のエフティミス・フィリップなので、異色作になるのでは? でもその前に、彼女が二度目のオスカーに輝くのかが気になりますよね! 文:渡辺麻紀 『哀れなるものたち』 上映中