会津地方の企業が連携して運営する「会津芸文センター」が今夏、発足６０周年を迎えた。９月１日には、記念事業として「でんじろう先生のドキドキわくわくサイエンスショー」を会津若松市の會津風雅堂で催す。企業の人手不足感が強まる中、福利厚生の一翼を担う芸文センターが果たす役割は大きい。従来の枠にとらわれない事業で時代の要請に応えてほしい。 　芸文センターは、会津地区経営者協会が中心となり、１９６４（昭和３９）年７月に設立された。明るい職場づくりや産業人の健全育成、地域文化向上への寄与を目的に、音楽や落語、スポーツ、レクリエーションなど多彩な催しを提供してきた。現在、賛助企業は７１社、会員数は約８千人を数える。１９７０年代には同様の団体が全国で９０を超えたが、趣味の多様化や経済情勢の変化などで解散し、現在は東日本で唯一となった。ひとえに、県内８地区の経営者協会の中で最多の２２８社が加盟する会津地区の結束と支えがあってこそだろう。

　近年は、著名な音楽家のコンサートもさることながら、会員の興味をそそるレクリエーション事業が人気を集める。会津若松市の観光農園で昨年実施したイチゴ狩りには、２９事業所から６２２人が参加した。会津本郷焼の陶芸体験会や、会津鉄道のお座トロ展望列車を活用した「貸し切りビール列車」なども好評だった。こうした企画は、会津の魅力や楽しみ方を社員や家族に知ってもらう上でも意義深い。今後も積極的に事業に取り入れるべきだ。 　「健康」を切り口とした企画も提案したい。例えば、鶴ケ城ハーフマラソン大会への参加を目標としたランニング教室や、減塩に主眼を置いた会津の郷土料理教室などを開催してはどうか。運動習慣の定着や健康的な食生活の普及に結び付けば、企業の健康経営にも資するはずだ。 　東北６県の経営者協会が昨年８月に合同で行った雇用動向調査では、この先人手不足を見込む企業が約６割に上った。人材の確保と定着を図るには、福利厚生の充実は欠かせない。とはいえ、中小企業の多くは、単独では手が回らないのが実情だろう。芸文センターを活用し、心に潤いのある職場づくりの一助にしてもらいたい。（紺野正人）