箱根駅伝で出雲、全日本連敗の青学大は逆襲できるのか?
原監督は、箱根では過去の成功体験を重視しており、前回は2区、3区、6区、8区、10区を同区間の経験者に任せて、しっかりと結果を残した。 今回も1区梶谷(前回区間4位)、4区森田歩希(3年/同区間2位)、6区小野田勇次(3年/同区間2位)、8区下田(同区間1位)という配置になれば、この5区間は大きなアドバンテージになるだろう。5区にも前回の経験者である貞永隆佑(4年/同区間8位)が控えている。 選手層が厚いチームだけに、リザーブの選手も強力だが、どうしてもピタッと来ない区間がある。 それが花の2区とエース田村和希(4年)が入る区間だ。 2区は3年連続で一色恭志(現・MGOアスリーツ)が担当して、いずれも1時間7分台後半の区間3位でまとめてきた。今回は全日本でアンカーを務めた鈴木塁人(2年)が候補になる。鈴木は今夏のユニバーシアード代表で、トラックのスピードがあり、上り坂にも強い。2区の適正はあるものの、箱根は未経験なうえ、難易度の高いコースを1回で好走するのは簡単なことではない。しかも、今回は戦う相手が良くない。 全日本を制した神奈川大の絶対エース・鈴木健吾(4年)がいるからだ。鈴木健は前回の2区(23.1km)を日本人歴代5位の1時間7分17秒で走破。今回は日本人最高タイム(1時間6分46秒)の更新を狙っている。全日本でも鈴木健と鈴木塁は最終8区を走り19・7kmで1分44秒差をつけられており、箱根では2分近い大差を奪われる危険もある。青学大としては下田を2区にまわすことも考えられるが、どれくらいのタイム差でし のぐことができるのか。
一方の田村はトラックでチーム最速タイムを持ち、駅伝では“切り札”となりうる選手だ。今季は出雲2区で5人抜き、全日本2区で4人抜きを演じて、ともに区間賞をゲットしている。箱根では1~2年時に最短区間だった4区(当時18.5km)で区間賞を獲得しているものの、前回は7区で区間11位。暑さに弱く、終盤にペースダウンした。突破力は随一だが、ブレーキも心配という選手だけに、区間配置が難しい。3~4区が適任とはいえ、気温を考慮して1区に起用することも考えられる。 前回と同じで、今年の青学大は山上り5区の攻撃力がないだけに、序盤から好位置につけて、他校が手薄になる3~4区、6~8区でトップを奪うのが勝ちパターンになる。 前回は2区終了時で2位につけると、3区で首位に立ち、3連覇のゴールへ突き進んだ。原監督は4連覇に向けて、どんな青写真を描くのか。 全日本では、チームから報道陣に「疲労もあるので選手への取材はご遠慮ください」と声がかかった。選手への取材を規制するなど、明るく元気一杯といういつものアオガクらしい雰囲気はなく、原監督の言葉数も少なかった。 「出雲で負けたときは仕方ないと思ったんですけど、今回は腹が立ってきた。先頭争いに一度も絡めなかったのは、おもしろくなかったですね。原監督にも闘志がわいてきたので、もう1回がんばろうと思います。1区以外は区間4位以内で来ているので収穫もあるんです。箱根は3連覇したマニュアルがあるので、粛々淡々とやるだけですよ。今回はチームの一体感がなかった。残り2か月はチーム一丸となって取り組んでいきたい です」 選手個々の走力では東海大とトップを争うレベルにある青学大。その総合力を箱根駅伝に向けてどれだけ集結できるのか。本番まで残り50日ちょっと。栄華を極めた王者・青学大の真価が問われる。 (文責・酒井政人/スポーツライター)