【西武投手王国への道】『勝利の方程式』の“最適解”に近づくために「今のところは僕の並べ方で行ってもらう」(豊田コーチ)
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 5年ぶりの優勝を狙う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う――。 取材・文=中島大輔 写真=川口洋邦 【選手データ】佐藤隼輔 プロフィール・通算成績・試合速報
ブルペンの層を厚くしようと模索
開幕から3カード続けて2勝1敗で勝ち越した西武だったが、4月9日のロッテ戦(県営大宮)から一転、19日の楽天戦(ベルーナ)で勝利するまで7連敗を喫した。 「やっぱり投手陣には負担がかかっている」 松井稼頭央監督がそう話したのは4月13日、昨季までチームメートだった山川穂高に2打席連続満塁本塁打を浴びて大敗したソフトバンク戦(ベルーナ)のあとだった。 この試合は今季の西武を象徴していた。先発の隅田知一郎は初回の1失点のあとは何とか粘りの投球を見せたが、5回表に3安打と2四球で2点を失い二死満塁で降板。追加点を許すと試合が決まりかねない場面で水上由伸が二番手として送られた。 「満塁でも僕はインコースを使わないといけない。デッドボールになったら押し出しですし、結構神経を使って投げました」 水上は八番・甲斐拓也に宝刀のシュートを内角に3球続けて1ボール、2ストライクとし、外角のスライダーがファウルになったあと、5球目はシュートを内角の際どいコースに投げ込みサードゴロに打ち取った。 5回を終えて0対3。試合終盤や、もっと点差が少なければ、ここで交代も考えられただろう。だが、西武ベンチは水上を続投させる。 「前の回に神経を使って投げて、1回気持ちを落としてからもう1回上げるのは、久々のイニングまたぎなんで結構難しかったですね」 6回、ソフトバンクの先頭打者・牧原大成が投手前にセーフティバントを試みる。大学2年まで野手だった水上は素早い出だしで捕球体勢に入ったが、ファンブルして安打に。 「自分のミスですけど少し動揺しました。次の周東(周東佑京)さん、調子のいいバッターなので難しかった。自分で難しくしちゃった感じです」 周東と柳田悠岐への2四球で一死満塁となり、迎えた山川に満塁本塁打を浴びて試合の大勢が決した。 もし1試合単位で見れば“勝負の綾”で片付けられるかもしれない。 だが、今季の西武は得点力不足に苦しんでいる。7連敗中は総得点9。近年、若手野手の伸び悩みが続いており、今後も劇的に打線が良くなることはなかなか考えにくい。 裏返せば、投手力で勝っていくしかないのだ。 先発陣には実力者がそろっている。問題は「勝利の方程式」をどう組み立てるかだ。豊田清コーチはこの点を構築しつつ、ブルペンの層を少しでも厚くしようと模索している。 9回は昨年ヤンキースで45試合に登板したアルバート・アブレイユ。8回は昨季までソフトバンクでセットアッパーを務めた甲斐野央で、7回は2022年に20ホールドを記録した本田圭佑が開幕当初の形だ。1イニングを抑える確率が高い順に9回から並べているのか。豊田コーチは4月2日の試合前にこう答えた。 「選手たちが力を発揮しやすい形にしています。『今日はここ』と順番をいきなり入れ替えると気持ちを持っていきにくいところが出てくるので。まだ後ろ(9回)をしっかりやったことのあるピッチャーがいないので、今のところは僕の並べ方で行ってもらう。苦手バッターに回ってきても行かせるつもり。克服しないと強いピッチャーになれないので」