熱戦続く大相撲九州場所 不祥事とメディアのあり方
一年納めと称される大相撲九州場所。横綱照ノ富士は3場所連続で休場となったが、9月の秋場所で優勝した大関貴景勝の連続制覇の行方や4人の新入幕の闘いぶりなど見どころが多い。今年は秋場所までの5場所中4場所で、優勝力士が12勝以下の混戦となっており、今場所も激戦必至。締めくくりの土俵にまつわる事柄を、さまざまな視点で探った。
■出身地の妙
昇進関連では貴景勝と同様、5場所連続三役の関脇大栄翔にも関心が集まる。優勝などの好成績を収めれば、大関昇進の声が出てくる可能性もある。小結だった3月の春場所では霧馬山(現大関霧島)に優勝決定戦の末に敗れたが、その後は関脇として勝ち越しを続け、7月の名古屋場所は9勝、秋場所は10勝した。昇進の目安として直前3場所で合計33勝との数字がメディアなどで取り沙汰されているが、あくまで目安に過ぎない。 大栄翔は埼玉県朝霞市出身。大相撲では出身地が重視される。番付表にしこ名とともに明示され、序ノ口力士を含め、本場所の土俵に上がるときには必ず故郷の名称がコールされる。今場所、幕内上位に特異な現象が起きた、ともに再小結の阿炎(越谷市)、北勝富士(所沢市)を含め、三役以上に埼玉県出身力士が3人も名を連ねた。同一県の三役3人は2003年九州場所の青森県(若の里、高見盛、岩木山)以来、20年ぶりの出来事。複数の横綱を輩出して相撲どころと呼ばれる青森県に対し、埼玉県出身者の初優勝は2021年初場所の大栄翔まで待たねばならなかった。ただ近年は、大栄翔と北勝富士が巣立った強豪の埼玉栄高出身者が次々に角界入りするなど相撲熱が高まりつつある。 折しも、埼玉県を題材にして2019年に大ヒットした映画「翔んで埼玉」の続編が11月23日に全国公開される。題して「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」。告知イベントには出演者とともに同県の大野元裕知事も出席し「映画をきっかけに県の素晴らしさを広めたい」と語り、気合が入っている。千秋楽は11月26日。もし、九州場所で3人のうちの誰かが賜杯を抱くような活躍をすれば、話題性の面で映画との相乗効果が期待できる。